はじめに
Googleが、生成AIの「Gemini Deep Research」に対してGmail、Docs、Drive、Chatと連携できる機能を追加しました。これまで、Deep Researchはウェブ検索を中心に情報を収集していましたが、今回の更新により、メール、ドキュメント、ファイル、チャット履歴を直接分析に組み込める形になります。本稿では、この新機能の詳細と実用性について解説します。
参考記事
- タイトル:Gemini Deep Research can now connect to your Gmail, Docs, Drive and even Chat.
- 発行元:Google Blog
- 発行日:2025年11月5日
- URL:https://blog.google/products/gemini/deep-research-workspace-app-integration/
要点
- Gemini Deep ResearchがGoogle Workspace(Gmail、Docs、Drive、Chat)および Slidesと連携し、内部情報を直接分析に活用できるようになった
- ウェブ検索の結果と内部情報を組み合わせることで、より包括的なレポート作成が可能になる
- 市場分析や競合分析など、社内戦略・データと外部情報を統合した分析が実現できる
- デスクトップから利用可能で、モバイルアプリへのロールアウトは近日中に予定されている
- 新機能はすべてのGeminiユーザーが利用可能
詳細解説
Deep Researchの機能と今回の拡張
Gemini Deep Researchは、ユーザーの問いかけに対して複数のウェブソースを自動的に検索・分析し、包括的なレポートを生成する機能です。今回の更新によって、内部に蓄積されたメール、ドキュメント、スプレッドシート、PDFなどの情報を、同じプロセス内で活用できるようになりました。これにより、外部の情報源と内部の戦略・データを一つのレポートに統合する形での分析が可能になります。
背景として、ビジネスシーンにおいては、市場分析や競合分析を行う際に、公開情報だけでなく、社内の会議記録や比較表、プロジェクト計画といった情報を参照する必要があります。従来、こうした情報の統合は手作業で行わざるを得ず、AIの分析プロセスに組み込むことは難しい課題でした。今回の機能拡張は、そうした実務的なニーズに応える形になっています。
連携可能なサービスと情報源
今回の更新により、Deep Researchは以下のGoogleサービスからデータを直接参照できるようになります。
Gmail:メールのスレッド内容から、プロジェクト関連の議論やクライアント対応の経緯を抽出できます。
Google Drive:Docs、Slides、Sheets、PDFなど、Driveに保存されているすべての形式のファイルを分析対象にできます。
Google Chat:チームの会話履歴から、リアルタイムな検討内容や意思決定の過程を参照できます。
これらの情報源は、ウェブ検索の結果と同じレベルで分析プロセスに組み込まれるため、単なる「参考情報の追加」ではなく、より正確で文脈に根ざしたレポートを生成することが期待されます。
実際の活用シーン
Googleが提示している活用例として、以下のようなシーンが考えられます。
新規事業の市場分析:チームの初期構想ドキュメント、関連するメール、プロジェクト計画をDeep Researchに指定し、ウェブ上の市場情報と組み合わせた市場分析レポートを自動生成できます。
競合分析:公開されている競合企業の情報に加えて、社内の戦略文書や比較表、過去のチャット記録を交差参照させることで、より深い競合分析が可能になります。
こうした活用が可能になることで、ビジネス分析の効率化だけでなく、分析の質そのものが向上する可能性があります。ただし、社内情報を含むため、機密情報の取り扱いやアクセス管理については、各組織のセキュリティポリシーに沿った慎重な運用が必要と考えられます。
利用方法と今後のロールアウト
利用方法は簡単です。デスクトップのGeminiから「Tools」メニューを開き、「Deep Research」を選択した際に、分析に用いる情報源を明示的に選択できるようになります。ウェブ検索、Gmail、Drive、Chatなど、必要な情報源にチェックを入れることで、分析対象を設定します。
現在のところ、この新機能はデスクトップから利用可能な状態ですが、モバイルアプリへのロールアウトは近日中に予定されているとのことです。すべてのGeminiユーザーが新機能を利用できるため、特別なアップグレードや申し込みは不要です。
まとめ
Gemini Deep ResearchがGoogle Workspace連携に対応することで、特にビジネス分析のプロセスが大きく変わる可能性があります。社内の散在した情報と外部情報を統合し、AIが自動的に分析・レポート化できるようになることで、分析作業の時間短縮だけでなく、より精度の高い判断材料の提供が期待されます。ただし、機密情報の取り扱いや、AI分析結果をどう活用するかといった組織側の準備も同時に必要と考えられます。今後、このような機能がどう広がり、ビジネス現場でどう活用されるかは、注視する価値があるでしょう。
