はじめに
本稿では、Google Developers Blogの発表を基に、コマンドラインツールGemini CLIと、PythonライブラリFastMCPの連携について解説します。この連携により、開発者は自作のツールやプロンプトを、より簡単にGemini CLIに統合できるようになります。
参考記事
- タイトル: Gemini CLI 🤝 FastMCP: Simplifying MCP server development
- 著者: Jack Wotherspoon, Jeremiah Lowin
- 発行元: Google Developers Blog
- 発行日: 2025年9月22日
- URL: https://developers.googleblog.com/ja/gemini-cli-fastmcp-simplifying-mcp-server-development/
- FASTMCPドキュメント:https://gofastmcp.com/integrations/gemini-cli
要点
- Googleのコマンドラインインターフェース「Gemini CLI」と、MCPサーバー構築のためのPythonライブラリ「FastMCP」が公式に連携した。
- fastmcp install gemini-cli という単一のコマンドで、FastMCPで構築したカスタムMCPサーバーをGemini CLIに簡単かつ自動で設定できるようになった。
- この連携により、開発者は自作のツール(外部API連携など)やプロンプト(定型文の呼び出し)を、Gemini CLI上でシームレスに利用可能になる。
- 特にローカル環境でのサーバー開発プロセスが大幅に簡素化され、Python開発者がGemini CLIの能力を容易に拡張できるようになった。
詳細解説
連携の背景:Gemini CLIとMCP、FastMCPとは
今回の連携を理解するために、関連する技術について簡単に説明します。
- Gemini CLI:
Googleの大規模言語モデルであるGeminiを、ターミナル(コマンドライン)から対話的に利用するためのツールです。開発者がコーディングや分析の際に、IDEやブラウザを離れることなくAIの支援を受けられるようにします。 - MCP (Model Context Protocol):
モデルが、単にテキストを生成するだけでなく、外部のコンテキスト(情報)にアクセスしたり、ツール(特定の機能を持つプログラム)を実行したりするための一連のルール(プロトコル)です。これにより、Geminiは外部のAPIを叩いて最新の情報を取得したり、データベースと連携したりといった、より能動的なアクションを実行できます。 - FastMCP:
このMCPのルールに準拠したサーバーを、Pythonで簡単に構築するためのライブラリです。Pythonのデコレータや型ヒントといったモダンな機能を利用して、直感的にツールやプロンプトを定義できるのが特徴です。
今回の連携がもたらす価値
これまでもGemini CLIでカスタムMCPサーバーを利用すること自体は可能でしたが、サーバーの登録や依存関係の管理などを手動で行う必要がありました。
今回の連携の最大のポイントは、FastMCP v2.12.3 から導入された新しいコマンドによって、このプロセスが大幅に簡素化された点です。
fastmcp install gemini-cli server.py
上記コマンドを実行するだけで、server.py ファイルに定義した自作のMCPサーバーが、Gemini CLIに自動でインストール・設定されます。内部的には、設定の管理、依存関係の解決、そしてGemini CLIのMCP管理システム(gemini mcp add)の呼び出しまで、すべてが自動的に処理されます。
具体的に何ができるようになるのか?
この連携により、Gemini CLIの体験を大幅に向上させる2つの主要な機能を簡単に実装できます。
- ツールの統合:
FastMCPを使って、外部のAPIやデータベースと連携する「ツール」を作成できます。例えば、「社内データベースから特定の顧客情報を検索するツール」や「特定の計算を実行するツール」などをPythonで定義し、Gemini CLIに統合できます。これにより、Gemini CLIはあなたのワークフローに能動的に参加するエージェントとなります。 - プロンプトのスラッシュコマンド化:
よく利用する定型プロンプトをFastMCPで定義し、Gemini CLI内でスラッシュコマンド(例:/promptname)として呼び出せるようになります。これにより、毎回長いプロンプトを入力する手間が省け、対話の効率が飛躍的に向上します。
導入手順
この連携を試すための手順は非常にシンプルです。
Gemini CLIのインストール
npm install -g @google/gemini-cli@latest
FastMCPのインストール (v2.12.3以降)
pip install fastmcp>=2.12.3
サーバーファイル (server.py) の作成
import random
from fastmcp import FastMCP
mcp = FastMCP(name="Dice Roller")
@mcp.tool
def roll_dice(n_dice: int) -> list[int]:
"""Roll `n_dice` 6-sided dice and return the results."""
return [random.randint(1, 6) for _ in range(n_dice)]
if __name__ == "__main__":
mcp.run()
ここに、カスタムツールやプロンプトをFastMCPの作法に則って記述します。
Gemini CLIへの統合
fastmcp install gemini-cli server.py
確認
Gemini CLIを起動し、/mcp コマンドを実行して、サーバーが正しく登録されていることを確認します。
※より詳細な情報や高度な設定については、公式のFastMCP連携ドキュメントをご参照ください。
- FASTMCPドキュメント:https://gofastmcp.com/integrations/gemini-cli
まとめ
今回のGemini CLIとFastMCPの連携は、開発者がAIの能力を自身の開発環境やワークフローに合わせてカスタマイズする際のハードルを大きく下げるものです。特に、使い慣れたPythonを用いて、複雑な設定なしにGemini CLIの機能を拡張できるようになった点は、多くの開発者にとって朗報と言えるのではないでしょうか。