[ニュース解説]世界の未来を握るかもしれないGoogleDeepMindCEOが語る、AIの次なる展開

目次

はじめに

 本稿では、Google DeepMindのCEOであり、AI研究の第一人者であるデミス・ハサビス氏が語るAIの未来像について、CBS Newsの記事を元にご紹介します。AIは私たちの生活や社会にどのような変化をもたらすのか、その可能性と課題について分かりやすく解説します。

引用元情報

要点

  • 汎用人工知能(AGI)の到来予測: ハサビス氏は、コンピューターが人間レベルの認知能力を持つAGIが、今後5年から10年で実現する可能性があると予測しています。
  • AIの指数関数的な進歩: AI技術は驚異的なスピードで進化しており、世界をより深く理解し、日常生活に組み込まれ、重要な問題を解決するだけでなく、想像力を持つ方向へと進んでいます。
  • AIコンパニオン「Project Astra」: Google DeepMindは、視覚・聴覚を持ち、人間と対話できるAIコンパニオン「Project Astra」を開発中です。これは、AIが現実世界を認識し、対話する能力を持つ新世代のチャットボットです。
  • AIの学習と創発的能力: 現在のAIは、インターネット上の膨大なデータから自律的に学習し、開発者が意図しない予期せぬスキルを獲得することがあります。
  • 実世界で行動するAI「Gemini」: AIモデル「Gemini」は、チケット予約やオンライン注文など、実世界で具体的なタスクを実行できるように訓練されています。
  • ロボット工学との融合: AIとロボット工学の融合により、周囲の状況を理解し、指示に従ってタスクを完了できるロボットが、今後数年でブレークスルーを迎える可能性があります。
  • AIの恩恵とリスク: ハサビス氏は、AIが創薬を加速させ病気の終焉をもたらしたり、希少性をなくす「根本的な豊かさ」を実現したりする可能性を指摘する一方、悪用や制御不能になるリスク、安全性確保の重要性も強調しています。
  • ガードレールの必要性: AIの安全性を確保するためには、システムへの安全限界(ガードレール)の組み込み、主要な関係者や国家間の連携、そしてAIに道徳や価値観を教えることが不可欠です。

詳細解説

汎用人工知能(AGI)とは?

 まず前提として、ハサビス氏が言及する汎用人工知能(AGI)とは、特定のタスクに特化した現在のAIとは異なり、人間のように様々な知的タスクを学習し、実行できるAIのことです。これが実現すれば、科学研究、医療、教育など、あらゆる分野に革命的な変化がもたらされると考えられています。ハサビス氏は、その実現が5年から10年後に迫っていると見ており、これはAI開発のスピードが非常に速いことを示唆しています。

AIはどのように世界を理解し、進化しているのか?

 ハサビス氏は、AIが「指数関数的な改善曲線」に乗っていると述べています。これは、AIの性能向上が一定ではなく、時間とともに加速度的に進んでいることを意味します。近年の成功により、さらに多くの注目、リソース、人材がこの分野に集まっていることも、この進歩を後押ししています。

 その具体的な現れの一つが、Google DeepMindの「Project Astra」です。これは、カメラ(目)とマイク(耳)を通して現実世界を認識し、人間と自然な対話ができるAIです。記事では、Astraが絵画を見て、それについて質問に答えたり、エドワード・ホッパーの「Automat」という絵画から独自の物語を創作したりする様子が紹介されています。これは、AIが単に情報を処理するだけでなく、文脈を理解し、ある種の解釈や創造性を持ち始めていることを示しています。

 また、AIは開発者が直接プログラムしない方法で学習します。インターネット上の膨大な情報を自律的に学習する過程で、人間が予期しなかった能力、いわば「創発的な特性」を獲得することがあります。これはAIの大きな可能性であると同時に、その挙動を完全に予測・制御することの難しさも示唆しています。

AIは現実世界で何ができるようになるのか?

 Google DeepMindは、AIモデル「Gemini」を、実世界で行動できるように訓練しています。具体的には、旅行のチケットを予約したり、オンラインで商品を注文したりといったタスクです。これは、AIがデジタルな情報処理だけでなく、物理的な世界や経済活動に直接関与していく未来を示しています。

 さらに、ロボット工学との融合も重要な進展です。AIがロボットの「脳」となり、周囲の環境を理解し、与えられた指示を推論し、実行できるようになります。ハサビス氏は、今後数年以内に、人間型ロボットなどが実用的なタスクをこなすデモンストレーションが見られるようになると予測しています。

現在のAIに欠けているもの:自己認識と真の想像力

 一方で、ハサビス氏は現在のAIには限界もあると指摘します。現時点では、どのAIシステムも自己認識意識を持っているとは言えません。将来的に可能性はあるものの、現段階では知的なツールとして開発し、それを用いて神経科学を進歩させることを優先すべきだと考えています。

 また、現在のAIには真の想像力、つまり、これまで誰も考えつかなかった新しい問いや仮説を生み出す能力はまだ欠けていると述べています。AIは既存の人間の知識の「平均」を学習している状態であり、それを超える独創的な発想は今後の課題です。

AIがもたらす恩恵と、向き合うべきリスク

 ハサビス氏は、AIがもたらす計り知れない恩恵を強調します。特に創薬の分野では、通常10年と数十億ドルかかるプロセスを、数ヶ月、あるいは数週間に短縮できる可能性があるとしています。これにより、「病気の終焉」が次の10年で手の届くところに来るかもしれないと期待しています。また、AIによって生産性が飛躍的に向上し、物資やサービスの希少性がなくなる「根本的な豊かさ」の実現も可能になると考えています。

 しかし、同時にリスクも存在します。最大の懸念の一つは、悪意のある者がAIを有害な目的に利用することです。また、AIがより自律的かつ強力になるにつれて、その制御をいかに確保するかという問題もあります。さらに、企業間のAI開発競争が激化する中で、安全性が後回しにされる懸念も指摘されています。

安全なAI開発のための「ガードレール」

 これらのリスクに対応するため、ハサビス氏は「ガードレール」、つまりAIシステムに組み込まれた安全限界の必要性を訴えています。これには、技術的な対策だけでなく、AI開発の主要なプレイヤーや国家間の協調が不可欠です。

 興味深い点として、ハサビス氏はAIに道徳を教えることができると考えています。AIはデモンストレーション教育を通じて学習するため、人間が子供を教育するように、AIにも価値体系指針、そしてそれを守るためのガードレールを与える必要があると述べています。

まとめ

 Google DeepMindのCEO、デミス・ハサビス氏の洞察によれば、AIは今後5年から10年で人間レベルの知能(AGI)に到達する可能性があり、私たちの世界を根本的に変える可能性を秘めています。Project Astraのような対話型AIや、Geminiのような実世界で行動するAI、そしてロボット工学との融合は、その具体的な進展を示しています。創薬の加速や希少性の克服といった大きな恩恵が期待される一方で、悪用や制御、安全性といったリスクへの対応が急務です。AIに適切なガードレールを設け、道徳的な指針を与えることの重要性が、今後ますます高まっていくでしょう。本稿が、AIの未来について考える一助となれば幸いです。

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