はじめに
NPRが2026年1月13日に報じたところによると、米国連邦取引委員会(FTC)がAI搭載の質問応答サービス「Pearl」を運営するJustAnswerを消費者詐欺で提訴しました。本稿では、この訴訟の内容と、企業が使用したとされる「ダークパターン」の手法について解説します。
参考記事
- タイトル: FTC accuses AI search engine of ‘rampant consumer deception’
- 著者: Bobby Allyn
- 発行元: NPR
- 発行日: 2026年1月13日
- URL: https://www.npr.org/2026/01/13/nx-s1-5676150/ftc-lawsuit-just-answers-consumer-deception
要点
- FTCはAI搭載質問応答サービス「Pearl」を運営するJustAnswerを、消費者を欺いて不要な月額課金に誘導したとして提訴した
- 同社は1ドルまたは5ドルの登録料を示しながら、実際には最大79ドルの月額料金を即座に課金していたとされる
- この手法は「ダークパターン」と呼ばれ、消費者を混乱させて望まないサービス契約に導く技術的手法である
- FTCは2022年から調査を開始し、数十万人の消費者が被害を受けたと主張している
- JustAnswerは価格を明示しており、キャンセルも容易だと反論している
詳細解説
JustAnswerとPearlのサービス概要
JustAnswerは、AIを活用した質問応答サービスを提供する企業です。同社のサービス「Pearl」は、大規模言語モデルによる回答を提供し、その後に人間の専門家がフォローアップの質問対応や事実確認を行うという独自の仕組みを特徴としています。
NPRによれば、同社はJustAnswer.com、AskWomensHealth.com、AskALawyer.com、Pearl.comなど、数百のドメインを運営しており、これらのサイトを通じて質問応答サービスを展開していました。PitchBookの市場調査によると、JustAnswerは従業員約700人を抱え、これまでに約5,000万ドルの資金調達を行っています。
FTCが指摘する詐欺的手法の詳細
FTCの訴状によれば、JustAnswerの手法は以下のような流れで消費者を欺いていたとされています。
まず、ウェブ検索を行った消費者が広告をクリックすると、同社が運営する複数のランディングページのいずれかに誘導されます。そこでAIアシスタント「Pearl」が追加の質問を行い、その後、1ドルまたは5ドルで同社の質問応答サービスに登録するよう促す画面が表示されます。
NPRによると、問題はここからです。FTCの訴状では、「JustAnswerは消費者に対し、1ドルまたは5ドルの登録料と、大幅に高額な月額サブスクリプション料金の両方を、登録時に即座に請求していた」と指摘されています。この月額料金は最大79ドルに達することがあり、消費者がキャンセルするまで毎月自動的に課金され続けます。
この仕組みは、「今すぐ確認」と書かれた大きなオレンジ色のボタンの上に小さな文字で記載されているだけで、多くの消費者が見落としやすい形式になっていたと訴状は主張しています。FTCによれば、この手法により数十万人の消費者が被害を受け、同社の行動を「詐欺的」と批判する苦情が殺到したといいます。
さらに訴状では、同社CEOのAndy Kurtzigがこの消費者詐欺を認識していながら、変更を拒否していたとも指摘されています。
ダークパターンとは何か
FTCが今回の訴訟で問題視しているのは、「ダークパターン」と呼ばれる手法です。ダークパターンとは、企業が消費者を欺いてサービスへの登録やサブスクリプションの維持に誘導するために使用する技術的な仕組みを指す専門用語です。
インターネット規制を専門とするペンシルベニア州立大学ロースクールのAndrea Matwyshyn教授は、NPRの取材に対し、「今日のインターネット上で最も一般的にこうした問題のある『ダークパターン』が見られるシナリオには、混乱を招くプロンプトを通じてユーザーに最大限のデータ共有に『同意』させること、そしてユーザーが明らかに定期的な取引に同意したり、いつでもキャンセルできると約束されていたにもかかわらず、退出方法が分からずに閉じ込められる状況が含まれます」と説明しています。
ダークパターンは、消費者が細かい文字で書かれた条件を見落とし、その後請求に縛られてしまうという古くからある問題の、現代的な形態と考えられます。シカゴ大学ロースクールのLior Strahilevitz教授によれば、このようなパターンは依然としてオンライン上で広く見られ、一部の消費者は請求に気づかなかったり、迅速に返金を求めなかったりするため、企業にとって「非常に収益性の高い消費者搾取の方法」になり得るといいます。
JustAnswerの反論と企業情報
これに対し、JustAnswerの広報担当者Ashe Reardon氏は声明で、FTCと約3年間にわたって協議してきた後の提訴に「失望している」と表明しました。同氏は、「当社は価格とモデルを事前に明確に公開しており、24時間年中無休のフリーダイヤル、ライブチャット、メール、ウェブ上でのワンクリックなど、複数のチャネルを通じてキャンセルをシンプルで便利にしています」と述べています。
FTCの訴状は、JustAnswerが連邦消費者保護法に違反したと主張し、同社に対する差し止め命令を求めています。FTCは2022年からこの企業の調査を開始していました。
類似事例と専門家の見解
この訴訟は、FTCが消費者保護のために展開してきた一連の取り組みの一環と位置づけられます。JustAnswerの調査を開始したLina Khan前FTC委員長は、このような企業行動に対して強い姿勢で臨んできました。
NPRによれば、Khan氏はAmazonに対しても同様の措置を取っており、FTCはAmazonが消費者を欺いてAmazon Primeのサブスクリプションを自動更新させるためにダークパターンを展開していたと指摘しています。
シカゴ大学のStrahilevitz教授は、「FTCと州検事総長は、違法なダークパターンを採用する企業をかなり頻繁に訴えています」と述べています。しかし同時に、「これらのダークパターンは消費者を騙す非常に収益性の高い方法になり得ます。なぜなら、一部の消費者は請求に気づかなかったり、迅速に返金を求めなかったりするからです」と指摘し、こうした手法が依然として蔓延している理由を説明しています。
ダークパターンの問題は、技術の進歩とともに新しい形態を取り続けており、規制当局と企業の間で継続的な緊張関係が生まれていると考えられます。消費者としては、オンラインサービスに登録する際、特に支払い情報を提供する前に、小さな文字で書かれた条件を注意深く確認することが重要だと思います。
まとめ
FTCによるJustAnswerへの提訴は、AI技術を活用したサービスであっても、消費者保護の原則は厳格に適用されることを示す事例と言えます。ダークパターンと呼ばれる手法は、オンライン上で依然として広く使用されており、消費者は登録プロセスにおいて細心の注意を払う必要があると考えられます。今後の裁判の行方が注目されます。
