[ニュース解説]高等教育のAI活用を検証する新学術誌、米CSUSBが創刊

目次

はじめに

 米国カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校(CSUSB)が2026年1月23日、高等教育におけるAI活用を研究対象とするオープンアクセス学術誌「International Journal of AI in Pedagogy, Innovation, and Learning Futures」を創刊しました。本稿では、この学術誌の目的と研究対象、カリフォルニア州立大学システムのAI推進との関係について解説します。

参考記事

要点

  • CSUSBが高等教育におけるAIの役割を検証するピアレビュー学術誌「International Journal of AI in Pedagogy, Innovation, and Learning Futures」を創刊した
  • 読者・著者ともに無料のオープンアクセスモデルを採用し、グローバルな研究参加の障壁を低減している
  • カリフォルニア州立大学システムが2025年に発表した全システム規模のAI推進イニシアチブと連動している
  • AI活用した教育・評価、倫理的・公平なAI実践、学習科学、教育設計、制度政策、教員育成などを研究対象とする
  • Viktor Wang教授が創刊編集者、Jennifer Beamerが管理編集者を務め、国際的な査読ネットワークで運営される

詳細解説

学術誌の概要と目的

 CSUSBによれば、この学術誌はAIが教育、学習、機関の意思決定にどのような影響を与えているかを研究するピアレビューフォーラムとして設計されています。ピアレビューとは、同じ分野の専門家による査読を経て論文を掲載する学術的な品質管理の仕組みです。この手法により、研究の信頼性と学術的価値が担保されます。

 学術誌の焦点は、AIを使うべきかどうかという議論を超えて、学習成果、学術的評価、長期的な学位の信頼性に対する信頼をどのように構築できるかという点に置かれています。大学がAI技術を導入する際、学生の学習を正確に評価できるか、学位の価値が維持されるかといった根本的な問いに向き合う必要があり、この学術誌はそうした課題を扱う場となると考えられます。

カリフォルニア州立大学システムのAI推進との連動

 この学術誌の創刊は、カリフォルニア州立大学(CSU)システムが2025年に発表した全システム規模のAI推進イニシアチブと時期を同じくしています。CSUSBによれば、このイニシアチブはCSUの22キャンパス全体でAIツール、専門的能力開発、労働力育成へのアクセスを拡大することを目指しています。

 CSUシステムは米国最大の4年制公立大学システムであり、約48万人の学生が在籍しています。このような大規模なシステム全体でAI活用が加速する中、学術誌は責任あるAI利用に関する研究、政策分析、教育設計の学術的な発表の場を提供する役割を担います。

研究対象と投稿の受付

 CSUSBの発表では、学術誌が扱う研究対象として以下の分野が明示されています。

  • AI活用した教育と評価: AIを組み込んだ教授法や学習評価の手法
  • 倫理的・公平なAI実践: 倫理、公平性、透明性、データプライバシーに関する課題
  • 学習科学: AIが学習プロセスに与える影響の科学的研究
  • 教育設計: AI時代の教育体験をどう設計するか
  • 制度政策とガバナンス: 大学におけるAI導入の政策と統治の枠組み
  • 教員育成: AIリテラシーに関する教員の専門的能力開発

 投稿は世界中の研究者から受け付けられます。高等教育におけるAI活用は国際的な課題であり、多様な地域や教育システムからの知見を集めることが、包括的な理解につながると思います。

オープンアクセスモデルの意義

 この学術誌は、読者にも著者にも費用を請求しないオープンアクセスモデルで運営されます。通常の学術誌では、購読料や論文掲載料(APC: Article Processing Charge)が研究へのアクセスや参加の障壁となることがあります。CSUSBによれば、この構造は参加障壁を減らし、研究成果へのグローバルなアクセスを拡大することを意図しています。

 オープンアクセス出版は、研究成果を広く公開し、知識の民主化を促進する動きとして近年注目されています。特にAI技術のような急速に発展する分野では、最新の研究知見に誰もがアクセスできることが、教育機関全体の対応力を高める上で重要と考えられます。

編集体制と査読システム

 学術誌の創刊編集者はViktor Wang教授が務めます。Wang教授はCSUSBの教育リーダーシップ・テクノロジー学部に所属し、16年以上にわたる学術誌編集の経験を持っています。管理編集者にはJennifer Beamerが就任しました。Beamer氏はフルブライト奨学生であり、コミュニケーション・情報科学の博士号を持ち、教育工学とオープンアクセス出版の経験があります。

 査読は国際的な研究者ネットワークによって実施される予定です。教育におけるAIの影響は国境を越えた課題であり、多様な視点からの査読が学術的な質を高めることにつながります。

 CSUSBによれば、学術誌はCSUSB図書館とRebecca Lubas館長の支援を受けており、出版実践、発見可能性、長期的なアクセスの強化が図られています。また、CSUSBは2023-28年の戦略計画「Transforming Lives and Communities」の中で、イノベーション、学生の成功、地域への影響を重視しており、AI分野をこれらの優先事項と交差する領域として位置づけています。さらに、CSUSB内にはAI技術の評価と統合に制度的な監督を提供するAI運営委員会が設置されており、学術誌はAIガバナンスと教育実践に関する査読付き研究の場を加えることで、こうした取り組みに学術的な次元を付与する役割を果たすと考えられます。

まとめ

 CSUSBが創刊した「International Journal of AI in Pedagogy, Innovation, and Learning Futures」は、高等教育におけるAI活用の研究と政策議論のための学術的な場を提供します。オープンアクセスモデルにより、グローバルな研究参加を促進し、CSUシステム全体のAI推進と連動しながら、倫理、公平性、学術的誠実性といった根本的な課題に取り組む研究が蓄積されることが期待されます。

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