はじめに
本稿では、エンタープライズAI(企業向け人工知能)分野の主要企業であるC3 AIが直面している現状について解説します。同社は最近、減収という厳しい決算内容と、創業者であるトーマス・シーベル氏から新CEOへの交代を同時に発表しました。
参考記事
- タイトル: C3 AI reports declining revenue, announces new CEO to replace Siebel
- 発行元: CNBC
- 発行日: 2025年9月3日
- URL: https://www.cnbc.com/2025/09/03/c3-ai-earnings-ceo-siebel.html
要点
- C3 AIの2026年度第1四半期決算は、売上高が前年同期の8,720万ドルから7,030万ドルへと減少し、純損失も拡大した。
- この決算発表と同時に、創業者トーマス・シーベル氏の後任として、ステファン・エヒキアン氏が新CEOに就任したことが発表された。
- CEO交代の直接的な理由は、シーベル氏が自己免疫疾患を患い、視覚に重大な障害が生じているという健康問題である。
- 同社は、シーベル氏の健康問題に加え、グローバルな営業・サービス組織の再編が影響し、ここ数ヶ月、株価が下落するなど厳しい状況に直面している。
詳細解説
C3 AIとはどのような企業か?
まず、C3 AIという企業について簡単にご紹介します。C3 AIは、大企業向けにAIを活用したソフトウェアプラットフォームやアプリケーションを提供する企業です。私たちが普段触れるチャットAIなどとは異なり、製造業の予知保全、サプライチェーンの最適化、金融機関の不正検知など、企業の根幹業務を効率化・高度化するためのAIソリューションを専門としています。
創業者のトーマス・シーベル氏は、かつてセールスフォースに買収される前のSiebel Systemsを率いていたソフトウェア業界の著名人であり、その実績からC3 AIも大きな注目を集めてきました。
厳しい決算内容とその影響
今回発表された2026年度第1四半期の決算は、市場関係者にとって厳しい内容でした。
- 売上高: 7,030万ドル(約105億円 ※1ドル150円換算)となり、前年同期の8,720万ドルから約19%の減少となりました。
- GAAPベースの純損失: 1株あたり86セントの損失となり、前年同期の50セントの損失から赤字幅が拡大しました。
この結果を受け、C3 AIの株価は時間外取引で14%下落しました。これは、投資家が同社の現状と将来性に対して、強い懸念を抱いたことを示しています。
創業者から新CEOへの交代
今回の発表で最も大きな注目を集めたのが、CEOの交代です。創業者であり、長年同社を率いてきたトーマス・シーベル氏がCEOを退き、後任としてステファン・エヒキアン氏が9月1日付で就任しました。
この交代の背景には、シーベル氏が自己免疫疾患の診断を受け、それが原因で「重大な視覚障害」を抱えているという、非常に深刻な健康問題があります。
新CEOに就任したエヒキアン氏は、過去に2つの会社を立ち上げ、いずれもセールスフォースに売却した経験を持つ、実績のある技術系経営者です。彼は就任にあたり、「C3 AIはAIとエンタープライズソフトウェアの分野で最も重要な企業の一つであり、そのプラットフォームとアプリケーションは他に類を見ないものです。エンタープライズAIという巨大な市場機会の中で、シェアを拡大できると確信しています」と力強いコメントを発表しています。
最近の苦境と今後の課題
今回の厳しい決算とCEO交代は、突然起きたわけではありません。C3 AIはここ数ヶ月、困難な状況にありました。
8月には、暫定的な決算内容が芳しくないことや、グローバルな営業・サービス組織の再編を発表したことで、すでに株価が急落していました。この組織再編は、販売戦略の立て直しを図るものだったと推測されますが、その過程での混乱が短期的な業績に影響を与えた可能性があります。
事実、シーベル氏自身も8月の時点で、この四半期の販売実績を「全く受け入れがたい」と厳しく評価し、その原因を組織再編の「破壊的な影響」と自身の健康問題にあると説明していました。
まとめ
エンタープライズAIの有力企業であるC3 AIは、減収という財務的な課題と、創業者から新CEOへという大きなリーダーシップの移行期という、二つの大きな試練に直面しています。
トーマス・シーベル氏の健康問題は非常に残念なニュースですが、企業としては経験豊富なステファン・エヒキアン氏を新たなリーダーとして迎えることで、この難局を乗り越えようとしています。今後の焦点は、新CEOのリーダーシップの下で、営業組織の混乱を収束させ、再び成長軌道に戻ることができるかどうかにかかっています。エンタープライズAI市場の競争が激化する中、C3 AIの次の一手に業界全体が注目しています。