[開発者向け]AnthropicとOpenAIが「Agentic AI Foundation」を共同設立―MCPとAGENTS.mdをLinux Foundationへ寄贈

目次

はじめに

 AnthropicとOpenAIが2025年12月9日、Linux Foundation傘下に「Agentic AI Foundation (AAIF)」を共同設立し、それぞれModel Context Protocol (MCP)とAGENTS.mdを寄贈したと発表しました。本稿では、両社の発表内容をもとに、AAIFの目的、寄贈される技術、そしてエージェントAI開発における標準化の意義について解説します。

参考記事

要点

  • AnthropicとOpenAIがBlockと共同で、Linux Foundation傘下にAgentic AI Foundation (AAIF)を設立した
  • AnthropicはModel Context Protocol (MCP)を、OpenAIはAGENTS.mdをそれぞれAAIFに寄贈する
  • MCPは1年間で10,000以上のアクティブなサーバーが稼働し、ChatGPT、Cursor、Gemini、Microsoft Copilotなど主要AI製品に採用されている
  • AGENTS.mdは2025年8月のリリース以降、60,000以上のオープンソースプロジェクトで採用されている
  • Google、Microsoft、AWS、Bloomberg、Cloudflareが支援企業として参加している

詳細解説

Agentic AI Foundationの設立背景

 Agentic AI Foundation (AAIF)は、AnthropicとOpenAI、Blockの3社が共同設立し、Google、Microsoft、AWS、Bloomberg、Cloudflareが支援する組織です。Linux Foundationの傘下に設置されたディレクテッドファンド(directed fund)という形態をとります。

 Linux Foundationは、LinuxカーネルやKubernetes、Node.js、PyTorchなど、世界的に重要なオープンソースプロジェクトの運営実績を持つ非営利組織です。AAIFはこの実績を活かし、エージェントAIの発展を透明性と協調性を保ちながら進めることを目指しています。

 OpenAIによれば、エージェントAIシステムは2025年に実験段階から実用段階へと移行しつつあります。コーディング支援、ワークフロー自動化、カスタマーサービスなど、実際のビジネスや消費者向けサービスで活用され始めている状況です。このような実用化が進む中で、相互運用可能なオープン標準の重要性が高まっていると言えます。

Model Context Protocol (MCP)の現状

 Anthropicは2024年にMCPを「AIアプリケーションと外部システムを接続するための普遍的なオープン標準」として発表しました。発表から1年間で、MCPは急速に普及しています。

引用:https://www.anthropic.com/news/donating-the-model-context-protocol-and-establishing-of-the-agentic-ai-foundation

 現在、10,000以上のアクティブな公開MCPサーバーが稼働しており、開発者向けツールからFortune 500企業のデプロイメントまで幅広く利用されています。プラットフォーム面では、ChatGPT、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、Visual Studio Codeなどの主要AI製品に採用されました。インフラ面では、AWS、Cloudflare、Google Cloud、Microsoft Azureがエンタープライズグレードのデプロイメントサポートを提供しています。

 Anthropicは最近、Claudeに75以上のコネクター(MCPで動作)を備えたディレクトリを追加し、API向けにTool SearchとProgrammatic Tool Calling機能をリリースしました。これらは本番環境規模のMCPデプロイメントを最適化し、数千のツールを効率的に処理し、複雑なエージェントワークフローでのレイテンシを削減するための機能です。

 技術面では、2025年11月25日のスペックリリースで、非同期操作、ステートレス性、サーバーアイデンティティ、公式拡張機能など多くの新機能が導入されました。また、PythonとTypeScriptの公式SDKは月間9,700万回以上ダウンロードされており、コミュニティ主導のレジストリも公開されています。

 MCPが急速に普及した背景には、AIアプリケーションと外部システムの連携が標準化されていなかったという課題があります。各企業が独自の接続方式を開発すると、開発コストが増大し、異なるシステム間での移植性が低下します。MCPはこの課題に対する業界標準の解決策として機能していると考えられます。

AGENTS.mdの採用状況

 OpenAIが寄贈するAGENTS.mdは、プロジェクト固有の指示とコンテキストをエージェントに提供するためのシンプルなオープンフォーマットです。2025年8月のリリース以降、60,000以上のオープンソースプロジェクトとエージェントフレームワークで採用されており、Amp、Codex、Cursor、Devin、Factory、Gemini CLI、Github Copilot、Jules、VS Codeなどが含まれます。

 AGENTS.mdは、README.mdと並んで配置される軽量なMarkdownファイルとして設計されています。コーディング規約、ビルド手順、テスト要件など、エージェントがコードベース内で安全かつ効果的に動作するために必要なプロジェクト固有のガイダンスを提供します。

 OpenAIによれば、Codexは「プロジェクト固有の指示を予測可能な方法で見つける」必要があったことがAGENTS.md開発のきっかけでした。内部ソリューションとして始まった仕様が、エコシステム全体で共鳴し、急速に採用されたことは、ベンダーニュートラルな共通規約への需要を示していると思います。

 Markdownベースの規約を採用したことで、エージェントの動作が多様なリポジトリやビルドシステム間でより予測可能になります。これはAIコーディングアシスタントの信頼性向上に寄与すると考えられます。

OpenAIのオープンソース貢献

 OpenAIは過去1年間、エージェントインフラの構築に向けてさまざまなオープンソース貢献を行ってきました。Agents SDK、Apps SDK、Agentic Commerce Protocolのほか、gpt-ossモデルやCodex CLIなどを公開しています。Codexは現在までにGitHub上で200万以上のパブリックプルリクエストのマージに使用されています。

 また、OpenAIはMCPの初期採用者かつコアコントリビューターとして、ChatGPTのコネクターとアプリの基盤にMCPを組み込みました。先週発表されたAnthropicおよびMCP-UIとの協力により、MCP AppsによってApps SDKがすべてのMCP開発者に拡張され、プラットフォーム間でインタラクティブなエージェント体験の構築が容易になります。

 これらの取り組みは、オープンで相互運用可能なインフラがツールやコミュニティ間で実際に採用されることを実証し、AAIFの基盤を築いたと評価できます。

AAIFがもたらす標準化の意義

 AAIFの設立は、エージェントAI開発における標準化と相互運用性の確保を目的としています。OpenAIは「共通の規約とニュートラルなガバナンスがなければ、エージェント開発は互換性のないサイロに分断され、移植性、安全性、進歩が制限されるリスクがある」と指摘しています。

 実験的なエージェントから実務システムへの移行が進む中で、断片化のコストは増大します。オープン標準は、エージェントをより安全で構築しやすく、ツールやプラットフォーム間で移植可能にし、新興カテゴリーが成熟する過程でエコシステムの断片化を防ぐことに貢献すると考えられます。

 AAIFは、エージェント相互運用性標準が協力的に開発、ガバナンス、拡張される中立的な場を提供します。Linux Foundationの運営経験により、単一企業が基盤インフラの方向性を支配することなく、中立的なガバナンス、コミュニティ構築、長期的な持続可能性が確保されると期待されます。

今後の展開

 Anthropicは「MCPのガバナンスモデルは変更されず、プロジェクトのメンテナーはコミュニティの意見と透明性のある意思決定を引き続き優先する」と述べています。OpenAIも「開発者と企業がエージェントに必要なコンテキストを提供する移植可能な方法を持ち、フォーマットがオープンに進化し、単一企業が方向性を支配しない」ことをAGENTS.md寄贈の理由として挙げています。

 AAIFは、ツールビルダー、研究者、企業、個人開発者など、あらゆる種類の貢献者を歓迎しています。エージェントAI開発の標準化が進むことで、開発者はより効率的にツールを構築でき、企業は異なるベンダー間での移植性を確保しやすくなり、エコシステム全体の成長が加速する可能性があります。

まとめ

 AnthropicとOpenAIによるAgentic AI Foundation設立とMCP・AGENTS.md寄贈は、エージェントAI開発における標準化への重要な一歩です。両技術はすでに広範な採用実績を持ち、Linux Foundationの中立的なガバナンスのもとでさらなる発展が期待されます。エージェントAIが実験段階から実用段階へ移行する今、オープン標準とコミュニティ主導の開発がエコシステム全体の成長を支える基盤になると思います。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次