はじめに
デジタルアート分野で生成AI機能が急速に普及する中、あえてAIを搭載しない、あるいは最小限に抑えたアプリケーションが注目を集めています。Creative Bloqが2026年1月17日に公開した記事では、アーティストの創作プロセスを人間主導に保つ5つのアプリが紹介されています。本稿では、この記事をもとに、各アプリの特徴と非AI方針について解説します。
参考記事
- タイトル: 5 AI-free apps every artist needs to try in 2026
- 著者: Ian Dean
- 発行元: Creative Bloq
- 発行日: 2026年1月17日
- URL: https://www.creativebloq.com/art/digital-art/5-ai-free-apps-every-artist-needs-to-try-in-2026
要点
- Procreateは生成AIを公式に拒否し、すべての創作プロセスを人間主導に保つ方針を明確にしている
- ArtRageは伝統的な画材のデジタル化に特化し、生成AI機能を含まない手動ペイント体験を提供している
- Caraは人間が制作したアート作品のみを許可するSNSプラットフォームとして、AI生成作品を禁止している
- RebelleとClip Studio Paintは一部にAI補助機能を持つが、生成AI機能は搭載せず、創作の主導権をアーティストに残している
- デジタルアート分野では、生成AIの普及に対して「創作の主体性を保つ」選択肢を求める動きが広がっている
詳細解説
Procreate:人間主導の創作を明言するiPadアプリ
Procreateは、iPad向けデジタルイラストレーションアプリとして高い評価を得ています。Creative Bloqによれば、同アプリの開発元は生成AIを公式に拒否し、すべての創作プロセスを完全に人間主導に保つと明言しています。
ペイント作業は従来のデジタルツールで行われ、アニメーションもフレームごとに作成する形式です。この「明確さ」が、多くのアーティストがProcreateを選ぶ理由になっていると記事では説明されています。
Procreateのような方針は、デジタルアート制作において「誰が創作したか」を明確にしたいアーティストにとって重要な選択肢と考えられます。生成AIが画像制作の一部を自動化する中、手作業による表現を重視する層にとっては、こうした明確な非AI方針が安心材料になると思います。
ArtRage:伝統画材の質感を再現するAndroid対応アプリ
ArtRageは、油彩、水彩、鉛筆といった伝統的な画材の質感をデジタル上で再現することに特化したアプリです。記事では、Procreateが主にApple製品向けであるのに対し、ArtRageはAndroidでも利用できる点が紹介されています。
油絵の具が混ざり合う様子、水彩絵の具のにじみ、鉛筆のテクスチャなど、いずれも自動化されておらず、完全に手動のペイント体験を提供しています。公式の非AI方針は公表されていないものの、生成AI機能は含まれていません。
伝統画材のデジタル再現は、物理的な画材の扱いに慣れたアーティストにとって、デジタル環境でも馴染みやすい制作体験を提供すると考えられます。また、実際の画材に比べてコストや準備の手間が少ない点も実用的な利点と言えます。
Cara:人間制作のアートのみを許可するSNSプラットフォーム
Caraは、ペイントアプリではなく、アーティスト向けのSNSプラットフォームです。記事によれば、AI生成アートは禁止されており、手動で制作された作品のみがアップロード可能です。
このプラットフォームは、スキルと制作プロセスを重視するフィード構成を特徴としています。無限に生成される「アニメ少女やサムライ風バットマン」といったAI画像の代わりに、人間の技術と意図が反映された作品が中心になっていると説明されています。
Caraのような「反AI」を掲げるプラットフォームの存在は、生成AIの普及に対する一部アーティストの懸念を反映していると思います。創作者の技術や努力が評価される空間を求める動きは、今後も一定の支持を集める可能性があります。
Rebelle:物理法則に基づく自然な画材シミュレーション
Rebelleは、油彩、水彩、鉛筆、パステルなどの自然な画材を高い忠実度でシミュレートするデジタルペイントツールです。記事では、創作作業は完全に手動であり、伝統的なペイント体験に近い感覚が得られると説明されています。
唯一のAI関与は、出力時のオプションとしてのアップスケーリング機能です。この機械学習機能は解像度を上げるために使用されますが、アートワークそのものを生成、変更、補助するものではありません。構図、筆致、プロセスは完全にアーティストのものとして残るため、許容範囲と記事の著者は評価しています。
この種の「出力品質向上」に限定されたAI利用は、創作プロセスには関与しないため、比較的受け入れられやすいと考えられます。ただし、どこまでをAI利用の許容範囲とするかは、アーティストごとに判断が分かれる部分かもしれません。
Clip Studio Paint:補助的AI機能のみで生成AIは搭載せず
Clip Studio Paintは、マンガ家、イラストレーター、アニメーターの定番ツールとして知られています。記事によれば、同アプリは一部の補助的AI機能(Colourize、Pose Scanner、Smart Smoothing、Remove Tonesなど)を含みますが、これらは「ワークフローを強化するツール」であり、新しいアートワークを生成するものではありません。
重要な点として、Clip Studio Paintには生成AI画像作成機能がなく、計画されていた画像ジェネレーター機能はユーザーフィードバックを受けて正式に中止されたと説明されています。すべての創作的決定はアーティストの手に残り、AIはユーザーが選択した場合のみサポート役を果たす形です。
このように、AI機能を「補助」に限定し、「生成」には関与させない設計は、アーティストの創作主導権を保ちながら、作業効率化の恩恵も受けられるバランスの取れたアプローチだと思います。ユーザーの声に応じて生成AI機能を中止した判断は、開発側がコミュニティの意向を重視している表れとも言えます。
まとめ
生成AIがデジタルアート分野に広く浸透する中、Procreate、ArtRage、Cara、Rebelle、Clip Studio Paintといったアプリは、創作の主導権をアーティストに残す選択肢を提供しています。各アプリは非AI方針や補助的AI利用に限定する形で、人間主導の創作体験を重視する姿勢を示しています。今後、こうした「AI非搭載」や「AI最小限」のツールがどのような支持を集めていくのか、注目されるところです。
