はじめに
近年、人工知能(AI) の急速な発展に伴い、その計算処理を支えるデータセンターの需要が世界的に高まっています。一方で、景気後退への懸念から、一部ではハイテク企業がデータセンターへの投資を抑制するのではないかとの見方も出ていました。
本稿では、AmazonとNvidiaの幹部がAIデータセンターの需要について語ったCNBCの記事を引用し、AIデータセンターを取り巻く現状と今後の展望について、専門家以外の方にも分かりやすく解説します。
引用元記事
- タイトル:Amazon and Nvidia say AI data center demand is not slowing down
- 発行元:CNBC
- 発行日:2025年4月24日
- URL:https://www.cnbc.com/2025/04/24/amazon-and-nvidia-say-ai-data-center-demand-is-not-slowin g-down-.html
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要点
- AmazonとNvidiaの幹部は、AIによる電力需要は増加の一途を辿るとの見解を示しました。
- Amazonのデータセンター計画に大きな変更はなく、需要は短期・長期ともに増加傾向にあると述べています。
- Nvidiaも需要の減速は見られないとしています。
- 一部で懸念された、より効率的なAIモデル(DeepSeek)の登場による需要鈍化の観測を否定しました。
- Anthropicの共同創業者は、AIを支えるために2027年までに50ギガワット(原子力発電所約50基分)の新たな電力容量が必要になると試算しています。
- AIの増大する電力需要を満たすためには、天然ガスが必要であるという点で、ハイテク業界とエネルギー業界のコンセンサスが形成されつつあります。
詳細解説
AIデータセンター需要は減速しない
本稿で取り上げる記事によると、AmazonとNvidiaの幹部は、AIデータセンター建設の勢いは衰えていないと明言しています。これは、景気後退懸念からハイテク企業が投資計画を縮小するのではないかという一部の投資家の懸念とは対照的です。
Amazonでグローバルデータセンター担当バイスプレジデントを務めるケビン・ミラー氏は、「(計画に)大きな変更は本当にない」と述べ、「非常に強い需要が続いていることを確認しており、今後数年および長期的に見ても、数字は上昇する一方だ」と語っています。これは、Wells Fargoのアナリストが業界筋の話として伝えた「Amazon Web Services(AWS)がデータセンターへのコミットメントの一部を一時停止している」という観測とは異なる見解です。ミラー氏はこの観測について、「(Amazonの計画について)些細な情報から奇妙な結論を導き出している」とコメントしています。
同様に、半導体大手のNvidiaでコーポレートサステナビリティ担当シニアディレクターを務めるジョシュ・パーカー氏も、「需要の引き戻しは見られない」と述べ、減速の兆候がないことを強調しました。
なぜAIは大量の電力を必要とするのか?
AI、特に大規模言語モデル(LLM)などの生成AIは、その学習と推論(学習済みモデルの利用)に膨大な計算処理能力を必要とします。これは、大量のデータを処理し、複雑な計算を高速に実行する必要があるためです。データセンターには、これらの計算処理を行うためのサーバーやGPU(画像処理装置)が高密度に集積されており、その結果、大量の電力を消費します。
効率化による需要鈍化懸念とその否定
今年初め、中国のAIスタートアップDeepSeekが開発したAIモデルがより効率的であるとの報道を受け、データセンターが必要とするエネルギー量が予想よりも少なくなるのではないかとの懸念から、電力関連株が売られる場面がありました。
しかし、Nvidiaのパーカー氏はこの反応を「反射的なもの(kneejerk)」と表現し、AIによる計算処理とエネルギー需要は増加する一方であるとの見方を示しました。AIモデルの効率化は進んでいますが、それ以上にAIの活用範囲の拡大やモデルの高度化が進んでおり、全体としての計算需要と電力需要は増え続けると考えられています。
50ギガワットという衝撃的な数字
AI企業Anthropicの共同創業者であるジャック・クラーク氏は、2027年までにAIをサポートするために50ギガワットの新たな電力容量が必要になると述べています。これは原子力発電所約50基分に相当する膨大な量であり、AIの発展がいかに大きなエネルギーインフラを必要としているかを示しています。クラーク氏は、「Anthropicや他のAI企業が見ているのは、新たなベースロード電源に対する途方もない需要の増加だ。我々は前例のない成長を目の当たりにしている」と語っています。
天然ガスの役割への期待
記事によると、これらの幹部はオクラホマシティで開催された、AIの増大するエネルギー需要への対応策を議論する会議で発言しました。ハイテク業界とエネルギー業界双方で、この電力需要を満たすためには天然ガスが必要になるというコンセンサスが形成されつつあるとのことです。再生可能エネルギーへの移行が世界的な潮流である一方で、AIによる急激な電力需要の増加に対応するためには、安定供給が可能で、比較的大規模な発電能力を持つ天然ガス発電への期待が高まっている状況がうかがえます。
まとめ
本稿では、AmazonとNvidiaの幹部の発言を元に、AIデータセンターの需要が引き続き旺盛であることを解説しました。一部で囁かれていた需要減速の懸念は、少なくとも現時点では主要プレイヤーによって否定されています。 AIの発展は社会に大きな変革をもたらす可能性を秘めていますが、その裏では膨大な電力需要という課題が存在します。2027年までに原子力発電所50基分に相当する電力が必要になるとの試算もあり、このエネルギー需要にいかに対応していくかが、今後のAI技術の普及と持続可能な社会の実現に向けた重要な焦点となります。ハイテク業界とエネルギー業界が連携し、天然ガスを含む多様なエネルギー源を活用しながら、この課題に取り組んでいく必要がありそうです。
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