はじめに
GitHub Blogが2026年1月8日に公開した記事では、AI開発ツールの普及により、開発者の間で型付き言語への移行が加速している現象が報告されています。本稿では、この記事をもとに、なぜAIツールが型システムの重要性を高めているのか、そしてTypeScriptをはじめとする型付き言語がどのように成長しているのかを解説します。
参考記事
- タイトル: Why AI is pushing developers toward typed languages
- 著者: Cassidy Williams
- 発行元: GitHub Blog
- 発行日: 2026年1月8日
- URL: https://github.blog/ai-and-ml/llms/why-ai-is-pushing-developers-toward-typed-languages/
要点
- AI開発ツールの普及により、開発者が直接記述していないコードの割合が増加し、型システムによる安全性確保の重要性が高まっている
- 2025年の学術研究によれば、LLM生成コードのコンパイルエラーの94%が型チェックの失敗によるものである
- TypeScriptは2025年8月時点でGitHub上で最も使用される言語となり、PythonとJavaScriptの両方を上回った
- TypeScriptは2025年に100万人以上の開発者が増加し、前年比+66%の成長を記録した
- Luau(+194%)、Typst(+108%)など、他の型付き言語も大幅な成長を示している
詳細解説
AIツールが型システムの重要性を高めている背景
GitHub Blogによれば、開発者がAIツールを使用すると、モデルに多く学習されている人気のライブラリや言語を選択する傾向があるだけでなく、リスクを低減するツールを選ぶ傾向があるとされています。コードが開発者自身だけでなくAIツールからも生成される場合、信頼性が重要な要素になると説明されています。
動的型付け言語であるPythonやJavaScriptは、開発時の迅速性と柔軟性を提供します。しかし、この機動性には型付き言語が提供する安全網が欠けています。型システムは、曖昧なロジックや入出力の不一致を表面化させる独自の役割を果たすと記事では指摘されています。
特に重要なのは、AIツールが生成するコードの量が増えるにつれて、「自分で直接書いていないコード」の割合が高まる点です。型システムは、開発者、フレームワーク、そしてより多くの足場やボイラープレートを生成するAIツールの間での共通の契約のような機能を果たすと考えられます。
型安全性の実証的な重要性
GitHub Blogは、2025年の学術研究を引用し、LLM生成コードのコンパイルエラーの実に94%が型チェックの失敗によるものであったと報告しています。この数値は、AI生成コードにおける型システムの重要性を示す具体的な証拠と言えます。
この研究結果が示唆するのは、プロジェクトにおいて94%のエラーが削減される可能性があるということです。型システムは、AIが時折導入する可能性のある予期しない動作を正確に捉えるため、動的型付け言語が「悪い」というわけではなく、型付き言語がこの特定の課題において優位性を持つと考えられます。
Octoverse 2025が示す型付き言語の台頭
GitHub Blogによれば、Octoverse 2025のレポートでは、TypeScriptが2025年8月時点でGitHub上で最も使用される言語となり、PythonとJavaScriptの両方を上回ったことが確認されています。TypeScriptは2025年に100万人以上の開発者が増加し、前年比で+66%の成長を記録しました(2025年8月と2024年8月の比較)。推定で合計260万人の開発者がTypeScriptを使用していると報告されています。
この成長の一因として、Astro、Next.js、Angularなど、デフォルトでTypeScriptでプロジェクトをスキャフォールディングするフレームワークの存在が挙げられています。しかし、レポートではAI支援開発がTypeScriptの台頭を後押ししたという相関的な証拠も見出されたとされています。
これは、AIがコードの記述速度だけでなく、開発者が使用する言語やツールにも影響を与えていることを意味します。型付きエコシステムは、AIが既存のプロジェクトに新しいコードを組み込む際に、前提を壊さずに統合できるという利点があると考えられます。
TypeScript以外の型付き言語の成長
GitHub Blogは、TypeScript以外の型付き言語も急速に成長していると報告しています。具体的には、Robloxのスクリプト言語であるLuauが漸進的型付け言語として前年比194%以上の成長を示しました。また、LaTeXと比較されることが多いTypstは、関数型設計と強い型付けを特徴とし、前年比108%以上の成長を記録しています。
さらに、JavaやC++、C#といった古い言語も、今年のレポートでこれまで以上の成長を示したとされています。これは、漸進的型付け、オプショナル型付け、強い型付けのすべてが勢いを増していることを意味します。それぞれが、構築内容やAIによる自動化の程度に応じて、異なるレベルのガードレールを提供すると考えられます。
今後の展望
GitHub Blogによれば、型システムは動的型付け言語を置き換えるものではありませんが、AIコーディングツールと並行して作業する開発者にとって共通の安全機能となっているとされています。AI支援開発とエージェント開発の人気が高まるにつれて、型システムは信頼性の高いソフトウェアを構築・出荷する方法の中心的な要素になると予想されています。
静的型付けは、コードがより信頼性が高く、保守しやすいものになることを保証します。開発者に共有された予測可能な構造を提供し、予期しない動作が減少することで、より集中した開発フローを実現できると考えられます。
まとめ
AIツールの普及により、開発者が直接記述していないコードの割合が増加する中、型システムは重要な安全網としての役割を果たしています。TypeScriptをはじめとする型付き言語の急成長は、この傾向を裏付けるものと言えます。今後、AI支援開発が一層普及する中で、型システムの重要性はさらに高まっていくと思います。
