[AIツール利用者向け]AnthropicとTeach For All、63カ国の教育者10万人にAIトレーニングを提供開始

目次

はじめに

 Anthropicが2026年1月21日、教育支援ネットワーク「Teach For All」との大規模なパートナーシップを発表しました。AI Literacy & Creator Collective (LCC)を通じて、63カ国の10万人以上の教育者にAIツールと研修を提供し、150万人以上の生徒に影響を与える取り組みです。本稿では、この教育分野におけるAI活用支援の詳細と、教育者が共同設計者として関わる新しいアプローチについて解説します。

参考記事

要点

  • AnthropicとTeach For Allが提携し、63カ国の10万人以上の教育者にAIツールClaudeと研修を提供する
  • 教育者は単なる利用者ではなく、AIツールの共同設計者として製品開発にフィードバックを提供する立場に位置づけられている
  • AI Fluency Learning Series、Claude Connect、Claude Labの3つのプログラムで構成され、530人以上が研修に参加、1,000人以上が日常的に交流している
  • リベリアでは気候教育カリキュラム、バングラデシュではゲーム化された数学学習アプリなど、教育者が自ら地域のニーズに合わせたツールを構築している
  • アイスランドやルワンダでの国家レベルのAI教育パイロットプログラムなど、Anthropicの教育分野での取り組みをさらに拡大するものである

詳細解説

グローバル教育ネットワークとの提携

 Anthropicが提携したTeach For Allは、Teach For Americaで確立されたアプローチを基盤とする、教育機会の拡大に取り組む独立組織の世界的ネットワークです。過去15年間で、教育資源の乏しい学校で働く教育者コミュニティとして世界最大規模に成長しました。Teach For India、Enseña Chile、Teach For Nigeriaといった組織が含まれ、各組織は地域主導で運営されながら、共通のミッションと相互協力を通じてつながっています。

 今回のパートナーシップにより、このネットワーク全体で働く10万人以上の教師と卒業生が、AI Literacy & Creator Collective (LCC)を通じてAI活用スキルを習得し、Claudeを実際の教室のニーズに合わせて活用できるようになります。

 AI技術の教育分野での活用は、世界中で議論が進められているテーマです。しかし、教育現場の実情を最も理解しているのは教育者自身であり、彼らの視点を製品開発に反映させることが重要と考えられます。

教育者を共同設計者として位置づける新しいアプローチ

 Anthropicによれば、このパートナーシップの特徴は、教育者をAIツールの単なる受動的な消費者ではなく、AIの発展を形作る共同設計者として位置づけている点にあります。AI LCCを通じて、AnthropicはClaudeへのアクセスを提供し、教育者は現場からのフィードバックを提供することで製品の進化に影響を与えます。

 Teach For AllのCEO Wendy Kopp氏は、「AIが教育をより公平にする可能性を実現するには、教師がその使用方法を形作り、設計に関する意見を提供する必要がある」と述べています。また、「Anthropicとのパートナーシップは、ネットワーク全体の教育者がこれらのツールを直接実験し、教育におけるAIの役割の共同創造者として学ぶことを支援している」と説明しました。

 Teach for AustraliaのCOO Michael Gilmore氏も、「Teach For Allネットワークからの実世界の経験とAnthropicからの技術的洞察の組み合わせは、素晴らしい学習機会を提供してくれた」とコメントしています。

 このような双方向のアプローチは、技術開発において重要な視点だと思います。技術提供者と実際の利用者が対等な立場で協力することで、より実用的で現場のニーズに合ったツールが生まれる可能性があります。

教育者が構築している実例

 Anthropicの発表では、世界各地で教育者が実際に構築しているツールの具体例が紹介されています。

 リベリアでは、AIに初めて触れた教師が、AI LCCのライブトレーニングに参加しました。数週間後、彼はClaude Artifactsを使用してリベリアの学校向けのインタラクティブな気候教育カリキュラムを構築しました。Claude Artifactsは、アプリ、ゲーム、ビジュアライゼーションなど、Claudeがその場で構築できるインタラクティブなツールです。

 バングラデシュでは、6年生と7年生を担当する教師が、生徒の半数以上が基本的な計算能力に苦労している状況に対応するため、ボスバトル、リーダーボード、XP報酬を備えたゲーム化された数学学習アプリを構築しました。

 アルゼンチンのEnseña por Argentinaの技術教育者Rosina Bastidas氏は、「いくつかの異なるAIツールを使った後、コミュニティイニシアチブを通じてClaudeを発見したことで、私の実践が大幅に拡大した」と述べています。「それ以来、複数の教育用アーティファクトを開発しており、現在はカリキュラムに沿った中等学校の生徒向けのデジタルでインタラクティブなワークスペースを設計している」とのことです。

 これらの事例に共通するパターンは、生徒のことを最もよく知る教師が、彼らに合わせたツールを構築できるようになったという点です。従来の教育技術では、一律の解決策が提供されることが多く、地域や生徒の個別ニーズに対応しきれない課題がありました。AI技術により、教育者自身がカスタマイズされたツールを作成できることは、教育の質の向上につながる可能性があると考えられます。

 また、Teach For NigeriaのITリーダーOscar Onuoha氏は、「このパートナーシップにより、同様の技術的機会を模索している組織のコミュニティとつながり、責任あるAI実装に関する重要な学びがあった」と述べています。これは、個々の教室を超えて、組織のリーダーシップレベルにも影響が及んでいることを示しています。

AI Literacy & Creator Collectiveの3つのプログラム

 AI LCCは、相互に関連する3つのプログラムで構成されています。

 AI Fluency Learning Seriesは、Anthropicの教育チームと共同で開発された研修プログラムです。AIリテラシー、Claudeの機能、実践的な教室での応用を扱う6つのライブエピソードで構成されています。Anthropicによれば、2025年11月の第1シリーズには530人以上の教育者が参加しました。

 Claude Connectは、コミュニティの継続的な学習ハブです。60カ国以上を代表する1,000人以上の教育者が、日々のピアツーピアの会話を通じて、プロンプト、使用事例、発見を交換しています。このような国際的なコミュニティは、各地域の教育者が互いに学び合う貴重な機会を提供していると思います。

 Claude Labは、さらに深く学びたい教育者向けの革新的なスペースです。このプログラムでは、教師がClaude Proへのアクセスを得て、高度な機能を使った実践的な実装をテストできます。参加者は、Anthropicチームと月次のオフィスアワーを持ち、Claudeの製品ロードマップに直接フィードバックを提供する機会があります。Anthropicによれば、プログラム発表から4日以内に200件以上の応募があったとのことです。

 3段階のプログラム構成により、基礎的な学習から高度な実践まで、教育者の習熟度に応じた支援が提供される仕組みと言えます。特にClaude Labでの製品ロードマップへの直接的な影響力は、教育者を真の共同設計者として位置づけるこの取り組みの象徴的な要素と考えられます。

Anthropicの教育分野での広がり

 Anthropicは、今回のパートナーシップ以前から、世界中の教育者や政府との協力を拡大してきました。

 アイスランドでは、世界初の包括的な国家レベルのAI教育パイロットプログラムの1つを開始しました。ルワンダでは、政府およびALXと提携し、アフリカ全域の数十万人の学習者にAI教育を提供しています。また、ホワイトハウスのAI教育タスクフォースへの参加を通じて、アメリカ全土の生徒と教育者が実践的なAIスキルを習得できるよう取り組んでいます。

 これらの取り組みは、営利企業であるAnthropicが、教育という公共性の高い分野に積極的に関与していることを示しています。AI技術の発展において、教育へのアクセスを広げることは、技術格差の縮小につながる可能性があると考えられます。

まとめ

 AnthropicとTeach For Allのパートナーシップは、63カ国の10万人以上の教育者にAIツールと研修を提供し、教育者を共同設計者として位置づける新しいアプローチを実現しています。リベリア、バングラデシュ、アルゼンチンなど各地で、教育者が地域のニーズに合わせたツールを自ら構築している事例は、AI技術が教育の公平性向上に貢献できる可能性を示しています。今後、このような取り組みが教育現場にどのような変化をもたらすか、注目していきたいと思います。

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