はじめに
Googleが2026年1月14日、「Global AI Film Award」の優勝者を発表しました。全世界から3,500件の応募があり、チュニジアのグラフィックデザイナー兼映画監督であるZoubeir ElJlassi氏が短編映画「Lily」で優勝し、賞金100万ドルを獲得しました。本稿では、この映画祭の概要と優勝作品、使用されたAIツールについて解説します。
参考記事
- タイトル: Announcing the winner of the Global AI Film Award
- 著者: Anthony Nakache
- 発行元: Google(Google MENA)
- 発行日: 2026年1月14日
- URL: https://blog.google/company-news/inside-google/around-the-globe/google-middle-east/winner-of-the-global-ai-film-award/
要点
- GoogleがAI Film Awardの優勝者を発表し、チュニジアのZoubeir ElJlassi氏が短編映画「Lily」で優勝、賞金100万ドルを獲得した
- 2025年9月に開始されたこのコンペティションには、全世界から3,500件の応募があった
- 優勝作品「Lily」は、Veo(動画生成)、Flow(精密制御)、Gemini(ビジュアル生成)などのGoogleのAIツールを活用して制作された
- アメリカ、フィリピン、韓国、エジプトからのファイナリスト4作品も、多様なストーリーテリングを示した
- 審査員には、テクノロジー、コンテンツ制作、映画制作の分野からクリエイティブリーダーが参加した
詳細解説
AI Film Awardの概要と応募状況
Googleは2025年9月、「AIはクリエイティブプロセスにおける強力なパートナーになる」という信念のもと、AI Film Awardを開始しました。このコンペティションは、1 Billion Followers Summitとのパートナーシップによって実施され、優勝者には100万ドルの賞金が提供されました。
応募数は全世界から3,500件に達し、それぞれがAIを活用した映画制作の可能性を示す作品となりました。1 Billion Followers Summitは、世界最大規模の年次クリエイターイベントの一つとして知られており、先週このイベントで優勝者が発表されました。
このコンペティションでは「Rewrite Tomorrow(明日を書き換える)」と「The Secret Life of Everything(すべてのものの秘密の生活)」という2つのテーマが設定されました。これらのテーマは、AIが持つ創造的可能性と、物語を通じて世界を再解釈する力を表現するものと考えられます。
優勝作品「Lily」について
優勝作品「Lily」は、チュニジアのグラフィックデザイナー兼映画監督であるZoubeir ElJlassi氏によって制作されました。この短編映画は、ひき逃げ事故の現場で発見された人形によって人生が一変する孤独なアーキビスト(記録管理者)の物語を描いています。
Googleによれば、この作品は「物は私たちの秘密の無言の証人である」というテーマを表現し、最終的に主人公が告白し、正しい行動をとることを決意する過程を描いています。審査員は、ElJlassi氏が人間の感情とテクノロジーを融合させた手法に魅了されたとのことです。重要な点として、この作品はツールの機能を誇示するだけでなく、深く感動的な物語を伝えるためにAIを活用したことが評価されました。
審査員には、テクノロジー、コンテンツ制作、映画制作の分野からクリエイティブリーダーが参加しており、技術的な側面だけでなく、ストーリーテリングとしての完成度も重視されたと推測されます。
使用されたGoogleのAIツール
ElJlassi氏の優勝作品は、Googleが提供する複数のAIツールをプロフェッショナルな映画制作ワークフローの中で活用した事例として紹介されています。
Veo(動画生成モデル)は、映画の独特で陰鬱な美学を作り出すために使用されました。Googleの最先端動画生成モデルであるVeoを使用することで、一貫性のある高品質な動画を生成し、作品の雰囲気を設定したとのことです。Veoは2024年5月にGoogleが発表した動画生成AIモデルで、1080p解像度の動画を生成できる能力を持つことが知られています。
Flow(精密制御ツール)は、キャラクターが必要な共感の感情を伝えるために使用されました。Flowは、シーンやスタイルに対する高度な制御を可能にするツールで、映像表現の細かな調整が求められる場面で重要な役割を果たしたと考えられます。
Gemini(ビジュアル生成)は、ストーリーボードの作成からキャラクターのルック&フィールの特定まで、クリエイティブパイプラインにおいて重要な役割を果たしました。Geminiは、Googleのマルチモーダル大規模言語モデルで、テキスト、画像、動画などさまざまな形式の情報を処理できることが特徴です。映画制作の初期段階における構想や視覚化に活用されたと推測されます。
ファイナリストの作品
優勝作品「Lily」以外にも、多様な視点からAIによるストーリーテリングの可能性を示すファイナリスト作品が選出されました。
「The Translator」(アメリカ)は、滅びゆく世界における自然とのつながりを描いた物語です。環境問題や人間と自然の関係性というテーマを扱っていると考えられます。
「Portrait No. 72」(フィリピン)は、高齢の写真家と子どもとの心温まる絆を描いた作品です。世代を超えた人間関係や記憶というテーマが含まれていると推測されます。
「Cats Like Warmth」(韓国)は、感情的な温かさの意味を発見するロボットの物語です。人工知能と感情という、AIをテーマにした作品として興味深い視点を提供していると言えます。
「HEAL」(エジプト)は、記憶と癒しへの未来的な旅を描いた作品です。テクノロジーと人間の内面的な体験を結びつける試みと考えられます。
これらのファイナリスト作品は、アメリカ、フィリピン、韓国、エジプトという異なる地域から選出されており、AIを活用した映画制作が世界的な広がりを見せていることを示しています。
今後の展望
GoogleのAnthony Nakache氏(Managing Director, Google MENA)は、このコンペティションについて「強力なツールを才能あるストーリーテラーの手に渡すと、創造性の境界が広がることが証明された」と述べています。
AI Film Awardは、AIツールが単なる技術的な機能を提供するだけでなく、クリエイターのビジョンを実現し、感動的な物語を語るための手段となることを示しました。今後、GoogleのAIツールを活用した映画制作がさらに発展し、より多くのクリエイターが参加していく可能性があると考えられます。
また、このような大規模なコンペティションが、AI映画制作というジャンルの確立や、新たな表現手法の探求を促進する役割を果たすと思います。
まとめ
Googleが発表したAI Film Awardの優勝者は、チュニジアのZoubeir ElJlassi氏で、短編映画「Lily」で賞金100万ドルを獲得しました。全世界から3,500件の応募があり、Veo、Flow、Geminiなどのツールを活用した作品制作の可能性が示されました。技術の進化とともに、AIがクリエイティブプロセスにおいてどのような役割を果たすのか、今後も注目していきたいところです。
