はじめに
CNBCが2025年12月31日に報じた記事によれば、Meta、Google、xAI、OpenAI、Microsoft、Amazonといったテック大手が、アメリカ全土で大規模なAIデータセンターの建設を進めています。本稿では、この史上最大規模のインフラ投資と、それを支える巨額の負債調達について解説します。
参考記事
- タイトル: Dust to data centers: The year AI tech giants, and billions in debt, began remaking the American landscape
- 著者: MacKenzie Sigalos
- 発行元: CNBC
- 発行日: 2025年12月31日
- URL: https://www.cnbc.com/2025/12/31/ai-data-centers-debt-sam-altman-elon-musk-mark-zuckerberg.html
要点
- Meta、Google、xAI、OpenAI、Microsoft、Amazonが、アメリカ中西部で都市規模のデータセンター建設を進めており、総投資額は約$850 billionに達する
- 主要5社の設備投資は2025年に約$443 billionで、2026年には$602 billionへと36%増加する見込みであり、約75%がAIインフラに向けられる
- テック企業は2025年に$121 billionの新規負債を調達し、過去5年平均の4倍以上の規模となっている
- OpenAIを中心に、Nvidia、Oracle、AMD、Broadcom、SoftBank、AWSとの複雑な取引関係が形成され、「循環型経済」との指摘もある
- 最大の制約は電力供給であり、企業は再生可能エネルギー、天然ガス、原子力など、あらゆる電源確保に動いている
詳細解説
各社が建設する巨大データセンターの実態
CNBCによれば、OpenAI CEO Sam Altmanが主導するStargateプロジェクトは、テキサス州アビリーンに建設中のデータセンター群で、1サイト当たり約$50 billionの投資規模となっています。OpenAI CFO Sarah Friarは、アビリーンのサイトだけで最終的に1ギガワット以上の電力容量に達する可能性があると説明しており、これはシアトルとサンフランシスコを合わせた規模の約75万世帯分の電力に相当します。
ルイジアナ州北東部では、MetaのMark Zuckerbergが「Hyperion」と名付けた400万平方フィート(約37万平方メートル)の施設を建設中で、完成時にはニューオリンズ市を上回る電力を消費し、敷地面積はマンハッタンのダウンタウンに匹敵する規模です。
アーカンソー州ウェストメンフィスでは、Googleが州史上最大の民間資本投資となる数十億ドル規模のキャンパスを1,100エーカー(約445万平方メートル)の土地に建設しています。テネシー州サウスメンフィスでは、Elon Muskが閉鎖されたElectrolux工場をわずか122日間でスーパーコンピュータ「Colossus」に転換し、現在は100万個のGPUを目指す「Colossus 2」を建設中です。
ウィスコンシン州南東部では、MicrosoftがCEO Satya Nadellaが「世界最強」と呼ぶAIデータセンターに$7 billion以上を投資しており、2026年初頭の稼働時には数十万個のNvidiaチップを搭載する予定です。インディアナ州のミシガン湖近くでは、Amazonが1,200エーカー(約486万平方メートル)の農地を「Project Rainier」に転換し、$11 billionを投資してAnthropicのAIモデル訓練専用のカスタムシリコンベースの施設を運営しています。
これらのプロジェクトは、単なるデータセンターというより、AI開発のための「工場」と呼ぶべき規模です。従来のクラウドインフラとは異なり、AIモデルの訓練には膨大な計算資源と電力が必要であり、企業はこれを確保するために、土地が安く、地方政府が協力的で、電力網の拡張が可能な地域を選んでいると考えられます。
史上最大規模の負債調達
CNBCの報道によれば、主要5社(Amazon、Microsoft、Alphabet、Meta含む)の設備投資は2025年に約$443 billionに達し、CreditSightsは2026年には36%増の$602 billionになると予測しています。この投資の約75%がAIインフラに向けられているとのことです。
テック業界は世界で最も収益性の高い産業の一つですが、すべての企業が現金だけでこの支出を賄えるわけではありません。2025年にハイパースケーラーは$121 billionの新規負債を調達しており、これは過去5年間の年平均発行額の4倍以上に相当します。Bank of Americaによれば、そのうち$90 billion以上が過去3カ月間に集中しています。
具体的には、Metaが$30 billion、Alphabetが$25 billion、Oracleが$18 billionの債券を発行しました。Citiの分析によれば、Oracleは現在、米国の非金融企業の中で最大の投資適格債発行体にランクされています。
Morgan StanleyとJPMorganのアナリストは、AIインフラ投資によってテック企業が今後数年間で最大$1.5 trillionの追加借入を行うと予測しています。UBSは2026年だけで最大$900 billionの新規発行があると見込んでいます。
クレジットデフォルトスワップ(CDS)市場では、すでに不安の兆候が現れています。Oracleのスプレッドは数年ぶりの高水準に拡大し、BarclaysとMorgan Stanleyは顧客にプロテクション購入を推奨しています。10月下旬には、Metaに関連する流動的なCDS市場が初めて活発に取引され、投資家がハイパースケーラーの債務ブームに対してヘッジに走っている状況が見て取れます。
Citiの米国投資適格クレジット戦略責任者Daniel Soridは12月の投資家向けビデオ通話で、「莫大な資本を必要とする変革に直面していることに、クレジット投資家として本質的に不快感を覚える」と述べています。
過去には、債務で資金調達されたインフラ投資が短期需要を上回った事例があります。ドットコムバブル期には、通信会社が光ファイバー網を急速に敷設するためにレバレッジを高めましたが、市況が悪化すると多くが再編を余儀なくされました。ネットワーク自体は残りましたが、初期投資家の多くは損失を被り、株式価値が消失したケースもありました。今回のAIインフラ投資も、同様のパターンを繰り返すのではないかという懸念が市場関係者の間にあると思います。
OpenAIを中心とした複雑な取引関係
CNBCによれば、OpenAIは2025年秋のわずか2カ月間で、総額約$1.4 trillionに上る提携を発表しました。この数字はあまりに大きく、AIバブルの警告や、電力、土地、サプライチェーンが野心に見合うのかという基本的な疑問を引き起こしています。
9月にOpenAIはNvidiaと$100 billionの株式・供給契約を発表しました。Nvidiaが次世代システム10ギガワット分と引き換えにOpenAIの株式を取得する内容です。10月にはAMDとInstinct GPUの展開で提携し、OpenAIがAMDの10%の株式を取得する可能性のある契約を結びました。数日後、BroadcomがOpenAIと共同設計したカスタムチップ10ギガワット分の供給に合意し、11月にはOpenAIが初めてAmazon Web Servicesとクラウド契約を締結し、Microsoftの独占的な地位が緩和されました。
OpenAI President Greg Brockmanは10月にCNBCに対し、「私たちはこれをやらなければなりません。本当に全人類に届くようにスケールしたいなら、これが必要です」と述べています。
批評家は、これを「循環型経済」と呼んでいます。Nvidiaは事実上、自社チップへの需要に資金を提供し、Oracleがサイトを建設し、AMDとBroadcomが代替サプライヤーとして位置づけられ、OpenAIが需要の中心を担う構造です。成長が続く限り機能しますが、需要が減少したり資金調達が厳しくなったりすると、共有されたエクスポージャーを通じてストレスが素早く伝播する可能性があります。
実際、Nvidiaは11月に投資家に対し、OpenAIとの最終契約締結や予想される条件での投資完了の「保証はない」と警告しており、AI関連の大型契約が多くの場合、フレームワークとして始まることを示しています。
Oracle側の見方はより単純です。Oracle共同CEO Clay Magouyrkは9月にテキサス州で、「業界全体の幅広いセクターからの需要が見られるので、特定の一箇所からだけではありません。コミットされた需要があるので、バブルを心配していません」とCNBCに語っています。
12月のDealBookサミットで、Anthropic CEO Dario Amodeiは「不確実性の円錐」について説明しました。データセンターの建設には18〜24カ月かかり、チップの発注は数年前に行われる一方で、需要予測は四半期ごとに変化し続けています。「$50 billionを手元に持っているわけではない」ため、資金調達はチップメーカーやクラウドプロバイダーとの提携に組み込まれることが多く、「従量制のように支払うことができる」と述べています。
この複雑な取引構造は、AIインフラ投資の特殊性を反映していると考えられます。巨額の資金が必要な一方で、需要の不確実性が高いため、企業は株式交換や供給契約を組み合わせたハイブリッド型の資金調達を選択しています。しかし、このような相互依存関係は、一つの要素が崩れると連鎖的な影響が及ぶリスクも内包しています。

電力供給という制約
OpenAI CFO Sarah Friarは、テキサス州での取材で「本当のボトルネックはお金ではありません。電力です」と述べています。
CNBCによれば、OpenAIは北米全域で800以上の候補地を検討しており、土地、変電所、送電容量を評価しています。電力需要が薄れていないことは、12月下旬にSoftBankのMasayoshi Sonがデータセンターに投資するDigitalBridgeを$4 billionで買収することに合意したことからも明らかです。この取引とOpenAIへの$40 billionのコミットメントを賄うため、SonはSoftBankのNvidia全株式を売却しました。彼は後に東京のフォーラムで、株式を売らなければならなかったことに「泣いていた」と語っています。
希少な資産は今や「通電済み不動産(energized real estate)」、つまり大規模に接続できる能力です。このような電力は規制と許可の対象であるため、建設はワシントンにも依存しています。
OpenAIはトランプ政権に対し、CHIPS法の税額控除をAIデータセンターにも拡大するよう働きかけています。ただし、CFOが11月のWall Street Journalのイベントでインフラローンへの政府の「バックストップ」という考えを示したところ、反発が大きく、数時間以内に撤回しました。OpenAI の Altman CEOはその後Xで、同社は政府保証を「持っていないし、望んでもいない」と主張しています。
企業はワシントンを待たずに、借入、建設、賭けを進めています。なぜなら、これまでスケールするたびにモデルが改善されてきたからです。このパターンが業界の根本的な信念です。より多くの計算資源がより高性能なシステムを生み出す。だからこそ、利益を上げたことがないスタートアップでも数千億ドルの評価額を得られるのです。
電力確保は、単なる容量の問題ではなく、常時稼働可能な電源の確保が重要です。風力や太陽光だけでは安定供給が難しいため、企業は再生可能エネルギー、天然ガス、さらには原子力など、あらゆる選択肢を検討していると考えられます。この電力制約が、AIインフラ競争の最終的な勝者を決める要因になる可能性があります。
訓練から推論へ:継続的な需要の源泉
CNBCの記事は、賭けの対象が大規模モデルの訓練だけでなく、経済全体でのモデル活用、つまり「推論(inference)」にも広がっていると指摘しています。推論とは、モデルを訓練することではなく、顧客対応、コード作成、クレーム処理、契約書作成など、モデルを製品に変える日常的な使用を指します。
推論は、誇大広告を利益に変換しなければならない場所であり、計算コストが決して止まらない場所でもあります。新しいユーザー、ワークフロー、またはエージェントごとに、一度限りの訓練実行ではなく、継続的な需要が追加されます。そのため、建設は月面探査というより公共事業競争のように見え始めており、企業は常時稼働のインテリジェンスを提供するために必要な電力と容量を確保しようと奔走しています。
Anthropic President兼共同創設者Daniela Amodeiは、サンフランシスコ本社でのインタビューで、「スケーリング則への信念を開拓した人々として、私たちは驚き続けています。毎年『物事が指数関数的に続くはずがない』と思うのですが、毎年そうなってきました」と述べています。
Anthropicの収益は過去3年間、前年比で10倍に跳ね上がっており、2025年だけで評価額は$60 billionから、現在進行中の資金調達ラウンドで$300 billionを超える可能性があるとされています。
この継続的な需要の存在が、巨額投資の正当化根拠となっています。AIモデルは一度訓練すれば終わりではなく、実際の業務で使われ続けることで価値を生み出します。そのため、推論用の計算リソースは継続的に必要となり、データセンター需要も長期的に続くと企業は見込んでいると思います。
バブルか革命か:分かれる見方
懐疑派は、建設が債務で賄われた過剰投資になり、最終的には倒産、投げ売り、株主の損失という馴染みのある結末を迎えるのではないかと懸念しています。
一方、Menlo VenturesのベンチャーキャピタリストでAnthropicの初期投資家でもあるMatt Murphyは、異なる見方を示しています。「ベンチャービジネスに25年いますが、クラウドの波、モバイルの波、半導体の波を見てきました。これはすべての波の母です」と述べています。
Dario Amodeiは、「データセンターに天才の国」のようなもの、つまりノーベル賞受賞者レベルであらゆる分野で遂行できるAIシステムに近づいていると考えており、その閾値は早ければ来年にも来る可能性があるとしています。
しかし彼は警鐘も鳴らしています。60 Minutesで、「エントリーレベルのコンサルタント、弁護士、金融専門家、ホワイトカラーのサービス産業の多くで、AIモデルはすでに介入なしでかなり優れています。そして私の懸念は、それが広範囲に及び、これまでの技術で見てきたよりも速いということです」と語っています。
CNBCは、アナリストが「株価以上の大きな賭け」だと語っていると報じています。これは電化やインターネットに匹敵する変革の始まりか、それとも将来の歴史家が警告の物語として研究するバブルのピークか、のいずれかです。
Altmanは疑念を聞いていますが、建設が行き過ぎたという考えは否定しています。9月にCNBCに対し、「過剰投資で損をする人もいます。そして過小投資で十分な容量を持たないことで損をする人もいます。賢い人たちは過度に興奮し、多くの人が大金を失います。多くの人が大金を稼ぎます。しかし長期的には、この技術の価値は社会にとって巨大になると確信しています」と述べています。
現在も建設は続いています。トラックが土煙を上げ、変圧器が唸りを上げています。そしてアメリカの中心部全体で、新時代の工場が形作られています。
まとめ
CNBCが報じたように、OpenAI、Meta、Google、xAI、Microsoft、Amazonは、史上最大規模のAIインフラ投資を進めており、その多くが巨額の負債で賄われています。電力供給が最大の制約となる中、企業は通電済み不動産の確保に奔走し、推論需要の拡大を見込んで建設を加速させています。これが変革の始まりかバブルのピークかは、今後数年で明らかになると思います。
