はじめに
NvidiaのCEO Jensen Huang氏が2025年10月8日、CNBCのインタビューで、AI向けコンピューティング需要がこの半年で大幅に増加していると述べました。本稿では、この発言の背景にある技術的な変化と、米中のAI競争におけるエネルギー供給の重要性について解説します。
参考記事
- タイトル: Nvidia shares rise after CEO Huang says AI computing demand is up ‘substantially’
- 著者: Spencer Kimball
- 発行元: CNBC
- 発行日: 2025年10月8日
- URL:https://www.cnbc.com/2025/10/08/jensen-huang-nvidia-computing-demand.html
要点
- NvidiaのCEO Jensen Huang氏は、この半年でAIコンピューティングの需要が大幅に増加したと述べた
- AI推論モデルは指数関数的な計算能力を使用しながら、同時に指数関数的な需要の伸びを見せている
- Nvidiaは先月、OpenAIの大規模データセンター建設に1000億ドルを投資すると発表した
- 米国は現在、AI競争において中国に「大きくリードしていない」状況である
- 中国はエネルギー供給の面で米国を大きく上回っており、データセンター向けの自家発電インフラの構築が急務である
詳細解説
この半年でAI需要が急増した背景
CNBCのインタビューでHuang氏は、「この1年、特にこの半年でコンピューティングの需要が大幅に増加した」と述べています。この需要増加の背景には、AIモデルの進化があります。従来のAIが単純な質問への回答を提供していたのに対し、現在のAI推論モデルは複雑な推論を行えるようになっています。
Huang氏は、現在「2つの指数関数的な成長が同時に起きている」と説明しました。1つ目は、AI推論モデルが使用する計算能力の指数関数的な増加です。2つ目は、その結果が非常に優れているため、誰もがそれを使いたがるという需要の指数関数的な増加です。「AIは十分に賢くなったので、誰もが使いたがっている」とHuang氏は述べています。
個人的にも、この半年でAIの性能が目に見えて向上したという実感があります。安価で高性能なAIツールが増え、一般の人でも扱えるAIツールの幅が明らかに広がっています。
Blackwellへの高い需要とOpenAI投資
Huang氏は、Nvidiaの最先端GPU「Blackwell」への需要が「本当に、本当に高い」と強調しました。同氏は「新しい構築の始まり、新しい産業革命の始まりにいる」とも述べています。
Nvidiaは先月、OpenAIの大規模データセンター建設に1000億ドルを投資すると発表しました。OpenAIは、Nvidiaのチップを使用した10ギガワット規模のデータセンターを建設する計画です。10ギガワットは、米国の800万世帯の年間消費電力、あるいは2024年夏のニューヨーク市のピーク需要に相当する規模です。
個人的にも、この半年で世界各地でのデータセンター建設のニュースが本当に増えた印象があります。
米中AI競争におけるエネルギー問題
インタビューでHuang氏は、「AI競争で誰が勝っているか」という質問に対し、米国は現在、中国に「大きくリードしていない」と答えました。特に注目すべきは、中国がAIを支えるための電力インフラの構築において米国よりもはるかに速く進んでいるという指摘です。
Huang氏は「中国はエネルギー面ではるかに先を行っている」と述べています。AI産業は、需要に迅速に対応し、消費者の電気料金上昇を防ぐために、電力網から独立した新しい発電設備を構築する必要があるとHuang氏は主張しています。データセンターには天然ガス発電を設置し、将来的には原子力発電も検討すべきだと提案しています。
「あらゆる発電方法に投資すべきだ」とHuang氏は述べ、「データセンターの自家発電は、電力網に接続するよりもはるかに速く進められる。これを実行しなければならない」と強調しています。
個人的な感想:日本の課題
日本の立ち位置について考えさせられます。Huang氏が指摘するように、AIチップの製造能力と電力供給の両方を満たせるかどうかが、今後のAI競争の鍵を握ります。
中国はAIチップ製造では現在アメリカにやや劣っているかもしれませんが、エネルギー供給では優位に立っているとのことです。この両面での競争は今後も激しさを増すでしょう。
一方、日本はエネルギー面で大きな課題を抱えています。現在、日本企業が活用しているAIツールの多くは米国製であり、そのほとんどはアメリカのデータセンターに依存しています。アメリカにデータセンターを依存する形は好ましいとは言えず、国内でのデータセンター建設を勧める必要がありますが、データセンターの電力確保は避けて通れない問題です。日本国内でデータセンターを建設する場合、まず最初に電力発電という点で大きな壁にぶつかります。この点について、日本としてどのような戦略を取るのかは、今後の競争力を左右する重要な問題ではないでしょうか。
まとめ
NvidiaのHuang CEOは、AI需要の急増と、それを支えるエネルギーインフラの重要性を強調しました。特に、中国がエネルギー面で先行しているという指摘は、AI競争の新たな側面を浮き彫りにしています。日本を含む各国が、AIチップ製造と電力供給の両面でどのように対応していくのか、今後の動向が注目されます。