[AIツール利用者向け]Slackでの作業が変わる。AIアシスタント「Claude」との連携強化で業務を効率化

目次

はじめに  

 本稿では、AI開発企業Anthropicが2025年10月2日に発表した、「Claude」と「Slack」の連携強化について解説します。この連携により、日常的にSlackを利用している多くのビジネスパーソンにとって、業務の進め方が変わる可能性があります。具体的に何がどのように便利になるのか、その仕組みや導入方法までを分かりやすくお伝えします。

参考記事

要点

  • Anthropic社のAIアシスタント「Claude」と、ビジネスコミュニケーションツール「Slack」の連携が強化された。
  • 連携方法は「ClaudeをSlackに直接追加する方法」と、「ClaudeアプリにSlackの情報を接続する方法」がある。
  • Slack上で直接Claudeを呼び出し、メッセージの下書き作成や文書分析、Web検索などが可能になる。
  • Claude側からSlack内の会話や共有ファイルを参照し、会議の準備やプロジェクトの進捗確認といった、より文脈に沿った作業を行えるようになる。
  • これにより、アプリケーションを切り替える手間なく、Slackを中心とした業務フローの中でAIの支援を受けられるようになる。

詳細解説 

 多くの企業で導入されているSlackは、日々のコミュニケーションの中心となっています。一方で、報告書の作成や情報収集のためにAIツールを利用する場合、Slackの画面から離れて別のアプリケーションを立ち上げる必要がありました。今回の連携は、この「作業の分断」を解消し、よりシームレスな業務体験を実現するものです。

連携によって実現する2つのこと

  今回の発表の核となるのは、以下の2つの連携方法です。それぞれで実現できることが異なります。

1. ClaudeをSlackに導入する

  これは、SlackのワークスペースにClaudeアプリを追加し、Slack内で直接Claudeの機能を利用する方法です。チームメンバーと会話するのと同じような感覚で、AIに作業を依頼できます。具体的な利用方法は3つあります。

  • ダイレクトメッセージ(DM): @Claude 宛にDMを送ることで、1対1の対話形式で調査や文章作成、分析などを依頼できます。
  • AIアシスタントパネル: どのチャンネルからでも、SlackのヘッダーにあるClaudeのアイコンをクリックすれば、進行中の会話を妨げることなくClaudeを呼び出せます。
  • スレッドへの参加: 既存の会話スレッド(特に公開チャンネルのスレッド)で @Claude とメンションすることで、そのスレッドの文脈を読み取らせた上で返信案を作成させることができます。重要な点として、Claudeが生成した返信案は、まず自分だけが見られる形で下書きとして提示されます。 内容を確認・編集した上で、問題がなければチームに共有できるため、不正確な情報が拡散されるのを防げます。

2. Slackの情報をClaudeに接続する

  こちらは、Claudeのアプリケーション側から、許可されたSlackのワークスペース内の情報を検索・参照できるようにする連携です。これにより、Claudeはより深い文脈を理解した上で、高度な応答や調査を行えるようになります。

 例えば、以下のような活用が想定されています。

  • 会議の準備: 「来週の定例会議のアジェンダを作成して」と依頼すると、Claudeが関連する複数のSlackチャンネルから直近の議論や共有資料を探し出し、議題や決定事項をまとめたブリーフィングを作成します。
  • プロジェクトの進捗確認: 複数のチャンネルに散らばっているプロジェクトの最新状況や課題点を収集し、進捗を要約させることができます。
  • 新メンバーのオンボーディング: 新しくチームに参加したメンバーがプロジェクトの経緯を把握するために、関連チャンネルの過去のやり取りや共有ドキュメントをClaudeに要約させるといった活用が可能です。
  • ドキュメント作成: チームでの議論を形式化し、会話の内容や関連する背景情報を含めた正式な文書やドキュメントを作成できます。

連携がもたらす戦略的意義

  この連携について、Salesforce Slack部門のChief Product Officer(最高製品責任者)であるRob Seaman氏は次のように語っています。

 「すべての企業は、AIエージェントが人間と協力して働く『エージェンティック・エンタープライズ』への道を歩んでいます。Anthropicとパートナーシップを組み、ClaudeをSlackに統合し、SlackのコンテキストをClaudeに提供することで、その実現を加速させることができます。これは、最高水準のAIを業務フローに直接組み込むものです。ClaudeとSlackのユーザーの間の隔たりをなくすことで、私たちは、これまで以上に生産的で、楽しく、知的なシームレスなAI体験を創り出しています。」

 この発言は、単なるツール連携を超えて、AIと人間が協働する新しい働き方の実現を目指していることを示しています。

セキュリティと管理体制について

  業務情報をAIに連携させる上で、セキュリティは重要な観点となります。この点について、Anthropicは以下のように説明しています。

  • 既存の権限を尊重: Claudeは、ユーザーがSlack内で閲覧権限を持つチャンネルや会話にしかアクセスできません。Slackの既存の権限設定がそのまま適用されます。
  • 組織のポリシーに準拠: Slackでの会話データは、各組織が定めているデータの保持ポリシーやセキュリティ設定に従って管理されます。
  • 管理者によるコントロール: Claudeアプリの導入は、まずSlackのワークスペース管理者が組織全体で承認する必要があります。その上で、個々のユーザーが自身のClaudeアカウントと連携させる仕組みです。

導入方法

  • SlackへのClaude導入: Slackの有料プランを利用しているチームが対象です。Slack MarketplaceからClaudeアプリをインストールできます(管理者の承認が必要)。
  • Slackコネクタの利用: ClaudeのTeamプランまたはEnterpriseプランの顧客が対象です。ただし、Slackコネクタを利用するには、まずSlack内にClaudeアプリをインストールしている必要があります。 その上で、管理者が組織全体でコネクタ機能を有効にした後、ユーザーがClaude設定画面の「Connectors(コネクタ)」タブから個別に設定を行います。

まとめ

  今回のClaudeとSlackの連携強化は、AIを特別なツールとしてではなく、日常的な業務プロセスに組み込むための一歩と言えます。これまでアプリケーション間を移動することで生じていた思考の中断や時間のロスをなくし、「Slackで仕事が完結する」体験をさらに推し進めるものです。特に、複数のチャンネルにまたがる情報を集約・要約する機能は、多くのビジネスパーソンにとって強力なツールになる可能性があります。

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