[AIツール利用者向け]Google HomeがAIで進化、新登場「Gemini for Home」を解説

目次

はじめに

 Googleのスマートホームプラットフォームが、新たな時代へと移行します。本稿では、Googleが2025年10月1日に発表した、AIモデル「Gemini」を統合した新しいスマートホーム基盤「Gemini for Home」について、その詳細と日本のユーザーへの影響を解説します。これにより、従来のGoogleアシスタントは置き換えられ、スマートホーム体験が大きく変わる可能性があります。

参考記事

要点

  • Googleは、スマートホーム向けの新AI基盤「Gemini for Home」を発表した。これは従来のGoogleアシスタントを置き換えるものである。
  • 過去10年間に発売されたすべてのスピーカー、スマートディスプレイ、カメラ、ドアベルにGemini for Homeが提供される
  • ユーザーは、より自然で文脈を理解する対話を通じて、スマートホームデバイスを操作できるようになる。
  • スマートカメラは「AIカメラ」となり、映像を解釈して「何が起きたか」を文章で説明する通知や、映像の要約機能(Home Brief)を提供する。
  • Google Homeアプリは全面的に再設計され、高速化、信頼性向上、UIの刷新が図られた。Nestの全機能も統合される。
  • Geminiに最適化された新ハードウェアとして、新型Nest Camが10月1日に発売、Google Home Speakerは2026年春に発売される。
  • 高度なAI機能は、新しいサブスクリプションプラン「Google Home Premium」(月額10ドルから)で提供される。
  • 基本的なAI機能と一部の新機能は無料で利用可能

詳細解説

「Gemini for Home」とは何か?

 「Gemini for Home」は、Googleのスマートスピーカーやスマートディスプレイに搭載されているGoogleアシスタントを置き換える、新しい基盤的なAIです。これまでのスマートホーム操作は、「電気をつけて」のような特定のコマンドに依存していましたが、Geminiの導入により、より人間らしい自然な対話が可能になります。

 例えば、以下のような変化が起こります。

  • 文脈の理解: 「食洗機の水が抜けないんだけど、最初に何をチェックすべき?」と聞いた後、「フィルターは問題なかった。次は?」と続けるだけで、Geminiは食洗機の話をしていると理解し、次の手順を教えてくれます。
  • 複雑な指示への対応: 「オフィスの照明以外、全部の電気を消して」といった、例外を含む複雑なリクエストにも対応できます。
  • 曖昧なリクエストの解釈: 「石油作業員が宇宙に行って小惑星を爆破する映画の曲をかけて」といった曖昧な表現でも、Geminiは意図を汲み取って曲を再生します。

 さらに、より自由な会話をしたい場合は、「ねえGoogle、チャットしよう」と話しかけることで、ホットワードなしで連続した対話が可能な「Gemini Live」モードを利用できます。

既存デバイスへの展開と早期アクセスプログラム

 重要な点として、過去10年間に発売されたすべてのスピーカー、スマートディスプレイ、カメラ、ドアベルにGemini for Homeが提供されます。これは既存ユーザーにとっても利用できることを意味しています。

 Gemini for Homeは早期アクセスプログラムとして展開が開始され、スピーカーとスマートディスプレイへのロールアウトは10月末頃から始まります。参加するには、Google Homeアプリ(バージョン4.0以上)でプロフィールアイコンをタップし、「Home settings」→「Early access」から登録します。利用可能になると、アプリ内で通知されます。

カメラは「AIカメラ」へ:映像を理解し、要約する

 Gemini for Homeは、スマートカメラの役割を根本から変えます。単に「動きを検知しました」といった通知を送るだけでなく、映像の内容を意味的に理解し、解釈するようになります。

  • AIによる説明(AI descriptions): 通知や録画履歴に、「USPSの配達員が荷物を玄関に置いて去っていきました」といった具体的な状況説明が追加されます。
  • 1日の出来事を要約(Home Brief): 1日分の録画映像から重要な出来事を自動で抽出し、短いダイジェストとして要約してくれます。これにより、長時間の映像を確認する手間が省けます。
  • 自然言語での映像検索(Ask Home): 「子供たちは何時に帰ってきた?」や「車のドアを開けっ放しにしちゃったかな?」のように、話し言葉で質問するだけで、関連する映像クリップを瞬時に見つけ出すことができます。

全面刷新されたGoogle Homeアプリ

 AIの進化に合わせて、司令塔となるGoogle Homeアプリも全面的に再設計されました。主な改善点は以下の通りです。

  • 高速化と信頼性の向上: アプリの起動が最大70%高速化し、クラッシュは80%近く減少。カメラのライブビュー表示も30%速くなりました。
  • Nestアプリの完全統合: これまで別アプリだったNest Thermostat(2015年以降のモデル)、Nest Protect(煙・CO検知器)、Nest x Yale Lockなどの設定や管理が、すべてGoogle Homeアプリに統合されます。
  • シンプルなUI: 「ホーム」「アクティビティ」「オートメーション」の3つのタブに整理され、より直感的な操作が可能になりました。
  • Ask Home: アプリ上部の検索バーから、自然言語でデバイスの操作やオートメーションの作成ができます。「毎日、日没にポーチのライトをつけて玄関の鍵をかけるオートメーションを作成して」と入力するだけで、設定が完了します。

Geminiに最適化された新ハードウェア

 Geminiの能力を最大限に引き出すため、新しいハードウェアも発表されました。

Nest Cam(第3世代) ※Nest Doorbell(第3世代)日本では未発売

  • 2K HDR画質: シリーズ史上最高の解像度で、AIがシーンを詳細に理解するための高品質なデータを提供します。第三者機関DXOMARKの評価で、3製品すべてがクラス最高の画質評価を獲得しました。
  • 広角ビュー: より広い範囲を一度に確認できます。Nest Camは152度、Nest Doorbell(1:1アスペクト比)は166度の対角視野角を実現。
  • 低照度性能の向上: 新しいセンサーと広い開口部により、夜明けや夕暮れ時でもより長くフルカラーモードを維持できます。

価格と発売情報:

  • Nest Cam Indoor(第3世代):¥15,800
  • Nest Cam Outdoor(第2世代):¥23,800
  • Nest Doorbell(第3世代):$179.99※日本では未発売

 これらの新ハードウェアは、2025年10月1日からGoogleストアや主要な小売店で販売が開始されます。日本を含む18カ国で同時発売されますが、Gemini for Homeの機能が日本で利用可能になるのは2026年初頭の予定です。先行展開は米国、カナダ、英国、アイルランド、オーストラリアで行われます。

無料で利用できる機能: 新型カメラには、サブスクリプション不要で以下の機能が含まれます。

  • デジタルズームとクロップ機能
  • 組み込みインテリジェントアラート(人、車両、動物の検知、ドアベルは荷物検知も対応)
  • イベント録画履歴が前世代の3時間から6時間に倍増

※サステナビリティへの配慮: 新製品はGoogleのホームデバイスにおける10年間のリサイクル素材使用の集大成となっています。Nest Cam OutdoorとNest Doorbelは長期的なUV保護を提供する特殊な再生樹脂を使用し、塗装を不要にすることで環境への配慮を実現。パッケージも100%プラスチックフリーです。

Google Home Speaker

  • Geminiのために専用設計された初のオーディオデバイス。
  • 高度なAI処理を高速に実行するためのカスタムプロセッサを搭載。
  • Geminiが応答している状態などを視覚的に示すライトリングを搭載。
  • 360°に広がるバランスの取れたサウンドを提供。
  • Google TV Streamerと2台ペアリングして、リビングルームをサラウンドサウンドのホームシアターに変えることが可能。

価格と発売情報:

  • 価格:$99.99(約14,000円:1ドル140円換算)
  • 発売時期:2026年春
  • 発売地域:米国、カナダ、英国、アイルランド、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ベルギー、スイス、オーストリア、日本、オーストラリア、ニュージーランド

5. 開発者向けプラットフォームと提供プラン

Works with Google Homeプログラムの拡張

 Googleは、サードパーティの開発者向けにもプラットフォームを拡大します。既に800M以上のデバイスがWorks with Google Homeプログラムを通じて接続されており、これらすべてのデバイスがGeminiの恩恵を受けます。

 重要な点として、既存の統合を持つ開発者は、Geminiのロールアウトが始まる今月中に、既存の統合を徹底的にテストすることが必須とされています。基本的な会話機能は追加の開発作業なしで利用可能になりますが、シームレスなユーザー体験を保証するため、デバイスが新しい会話機能で確実に動作することを確認する必要があります。

カメラメーカー向けプログラム

 カメラメーカー向けに、ハードウェアのリファレンスデザイン、推奨SoC、イメージセンサー、Google Home camera embedded SDKを提供し、パートナー企業がGemini対応のAIカメラを開発しやすくします。これにより、Nest製品だけでなく、様々なブランドやフォームファクター、価格帯でGemini for Homeの力を体験できるようになります。

 その第一弾として、Walmartが手頃な価格の「onn」ブランドのカメラを発表しました。

  • onn Indoor Camera Wired:$22.96
  • onn Video Doorbell Wired:$49.86

 これらは2025年10月1日からWalmart.comおよび米国内の店舗で販売されます。(日本での正規販売に関しての情報は確認した範囲で特にありませんでした。)

Google Home Premiumサブスクリプション

 Gemini for Homeの高度なAI機能を利用するには、月額10ドル()からの新しいサブスクリプションプラン「Google Home Premium」への加入が必要です。

Premium限定の機能:

  • Gemini Live
  • AI搭載通知
  • Home Brief(1日の出来事の要約)
  • 自然言語での映像検索
  • Ask Homeでのオートメーション作成

 このプランは、Google AI ProおよびUltraのサブスクリプションにも追加料金なしで含まれます

まとめ

 Googleが発表した「Gemini for Home」は、家庭内のあらゆるデバイスを知能化し、ユーザーとの関わり方をより自然で協力的なものへと変える、根本的なプラットフォームの刷新を目指したものです。 特筆すべきは、この進化が新製品だけでなく、過去10年間に発売されたすべての対応デバイスに提供される点です。早期アクセスプログラムへの参加により、既存のユーザーも10月末からGeminiの力を体験できるようになります。日本での本格展開は2026年初頭と少し先になりますが、今後のスマートホームの未来を占う上で、今回の発表は重要な一歩と言えます。

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