はじめに
Googleは2025年10月1日、同社の公式ブログにて、生成AIを用いて制作された映像作品を対象とする大規模なコンテスト「AI Film Award」の開催を発表しました。本稿ではこの発表内容をもとに、アワードの概要や応募要項、制作に使用されるGoogleのAIツールについて、解説します。
参考記事
- タイトル: The Global AI Film Award is now accepting applications
- 発行元: Google
- 発行日: 2025年10月1日
- URL: https://blog.google/products/gemini/the-global-ai-film-award-is-now-accepting-applications/
- 映画祭に関するURL:https://www.1billionsummit.com/ai-film-award
要点
- Googleは、クリエイターイベント「1 Billion Followers Summit」と共同で、賞金100万米ドルの「AI Film Award」を開催する。
- 応募作品は、Gemini、Veo 3、Flowなど、Googleが提供するAIモデルやツールを使用して制作されている必要がある。
- 応募期間は既に開始されており、締切は2025年11月20日である。
- 作品の総尺は7分から10分で、そのうち70%以上のコンテンツをGoogleのAIツールで生成することが必須条件となる。
詳細解説
「AI Film Award」の開催概要
今回発表された「AI Film Award」は、Googleと、世界最大級のクリエイターイベント「1 Billion Followers Summit」が共同で開催する映像コンテストです。最も優れた作品には100万米ドル(約1.4億円 ※1ドル140円換算)の賞金が贈られます。
授賞式は、2026年1月にドバイで開催される「1 Billion Followers Summit」の会場で行われる予定です。このアワードは、AIを創造的なパートナーとして活用する世界中のコンテンツクリエイターに、新たな表現の機会を提供することを目的としています。
応募要項の詳細
本アワードへの応募を検討するクリエイターが把握すべき、主要な応募要項を以下にまとめます。
- 応募期間: 開催中~2025年11月20日
- 作品の長さ: 7分~10分
- 制作上の必須条件: 作品全体の70%以上が、GoogleのAIツールおよびモデルを使用して生成されている必要があります。補助的な編集作業(カット編集、テロップ挿入など)に他のソフトウェアを使用することは認められていますが、映像の主要部分の生成はGoogleのAIで行う必要があります。
- 応募テーマ: 以下のいずれかのテーマに沿った作品であること。
- 「Rewrite Tomorrow(明日を書き換える)」:未来に対する楽観的で、インスピレーションを与えるような視点を描く。
- 「The Secret Life of(〜の秘密の生活)」:世界中に存在する、感動的でまだ語られていない物語を発掘する。
- 言語: 制作言語は問いませんが、英語の字幕を付与することが必須です。
- 応募方法: 応募は個人名義で行う必要があります。複数作品の応募も可能です。詳細は公式サイトで確認してください。
制作に使用するGoogleのAIツールについて
本アワードでは、Googleが開発・提供するAIツールの活用が求められます。発表内で言及されている主要なツールは以下の通りです。
- Veo 3
Googleの最新鋭の動画生成モデルです。テキストや画像から高品質な動画を生成するだけでなく、街の喧騒のような環境音やキャラクター同士の対話といった音声付きの動画を、複数の言語にわたって生成する能力を持ちます。 - Flow
より高度な映画制作を目的としたツールです。キャラクター、シーン、スタイルなどを細かく制御し、一貫性のある物語を構築するための機能が搭載されていると考えられます。単発の動画クリップ生成にとどまらず、映画的な文脈を持った作品制作を支援します。 - Nano Banana(Google Geminiで利用可能)
これはGoogleの画像生成モデル「Imagen 3」のコードネームの一つとされています。Google Geminiを通じて利用でき、映像の素材となる画像の生成や、既存画像の編集に使用できます。 - Gemini
上記のツール群の基盤となる、Googleの高性能なマルチモーダルAIモデルです。テキスト、画像、音声、動画などを統合的に扱う能力が、これらのクリエイティブツールの実現を支えています。
クリエイターにとっての意義
本アワードは、日本のクリエイターにとっても大きなチャンスとなり得ます。制作は日本語で行い、英語字幕を付与すればよいため、言語の障壁は比較的低いと言えます。AIという新しい表現手法を用いて、発信する機会といえそうです。
まとめ
今回発表された「AI Film Award」は、AIがコンテンツ制作における重要なツールとして定着しつつある現状を象徴するイベントです。賞金額の大きさや国際的な舞台は、世界中のクリエイターの注目を集めるでしょう。AIを活用した新しい映像表現の可能性を追求するクリエイターにとって、挑戦する価値のあるコンテストと言えます。