はじめに
本稿では、AI開発企業であるAnthropicが2025年9月30日に発表した、AIコーディングアシスタント「Claude Code」のアップデートについて解説します。今回のアップデートでは、VS Code拡張機能や、作業状態を安全に巻き戻せるチェックポイント機能などが追加され、Claude Codeがより自律的かつ複雑な開発タスクをこなせるように機能強化が図られました。
参考記事
- タイトル: Enabling Claude Code to work more autonomously
- 発行元: Anthropic
- 発行日: 2025年9月30日
- URL: https://www.anthropic.com/news/enabling-claude-code-to-work-more-autonomously
要点
- Claude Codeに、IDE内で直接利用できるVS Code拡張機能(ベータ版)が追加された。
- コードの状態を自動で保存し、いつでも巻き戻せるチェックポイント機能が導入され、より複雑で大規模なタスクの実行が安全になった。
- ターミナルインターフェースが刷新され、プロンプト履歴検索などの機能が追加され、利便性が向上した。
- カスタムエージェントを作成するためのClaude Agent SDKが、サブエージェントやフックに対応し、機能が拡張された。
- これらの機能は、Sonnet 4.5モデルを基盤として動作する。
詳細解説
開発環境との連携強化:VS Code拡張機能とターミナル
今回のアップデートで、多くの開発者が利用する統合開発環境(IDE)であるVisual Studio Code(VS Code)向けのネイティブな拡張機能がベータ版として導入されました。
これにより、開発者は使い慣れたIDEを離れることなく、Claude Codeの支援を受けられます。具体的には、専用のサイドバーパネルに変更点がリアルタイムで差分(diff)表示され、AIによるコードの変更内容を視覚的に確認しながら作業を進めることが可能です。これは、ターミナルでの操作よりもグラフィカルなインターフェースを好む開発者にとって、大きな利点となります。
また、従来のターミナルインターフェースも刷新されました。ステータスの可視性が向上したほか、Ctrl+rキーで過去のプロンプト履歴を検索できるようになり、以前の指示を再利用したり編集したりするのが容易になりました。
自律的なタスク実行を支える新機能:チェックポイント
今回のアップデートで特に重要なのが、チェックポイント機能の導入です。これは、Claude Codeがコードに変更を加える直前に、作業状態(コードの状態)を自動的に保存する仕組みです。
もしAIによる変更が意図しない結果になった場合でも、ユーザーはEscキーを2回押すか、/rewindコマンドを実行するだけで、即座に以前のチェックポイントまで状態を巻き戻すことができます。復元する際には、「コードのみ」「会話の履歴のみ」「その両方」を選択することが可能です。
この機能により、開発者は大規模なリファクタリング(コードの内部構造の改善)や新機能の探索的な実装といった、失敗のリスクが伴う複雑なタスクも、安心してClaude Codeに委任できます。 なお、この機能はバージョン管理システム(Gitなど)と組み合わせて利用することが推奨されています。
高度な自律性を実現する連携機能
チェックポイント機能は、同時にリリースされた他の機能と組み合わせることで、さらにその効果を発揮します。
- サブエージェント (Subagents)
メインのタスクとは別に、専門的なサブタスクを並行して実行させる機能です。例えば、メインエージェントがフロントエンドのUIを構築している間に、サブエージェントにバックエンドAPIの開発を任せる、といった並行開発ワークフローを実現できます。 - フック (Hooks)
特定のタイミングで、あらかじめ定義されたアクションを自動的に実行する機能です。例えば、「コードが変更されたら必ずテストスイートを実行する」「コミットする前にリンター(コード整形ツール)をかける」といった開発ワークフローの自動化に貢献します。 - バックグラウンドタスク (Background tasks)
開発サーバーの起動など、長時間実行し続ける必要があるプロセスを、他の作業を妨げることなくアクティブに保つ機能です。
これらの機能を組み合わせることで、Claude Codeは単なる指示待ちのツールではなく、より自律的に動作する開発エージェントとして機能します。
開発者向け:Claude Agent SDKの拡張
「Claude Code SDK」から名称が変更された「Claude Agent SDK」も機能が拡張されました。前述のサブエージェントとフックがSDK経由でサポートされるようになり、開発者は特定の業務フローに特化した、より柔軟で強力なカスタムAIエージェントを構築できます。
すでにこのSDKは、金融コンプライアンスチェック、サイバーセキュリティ分析、コードのデバッグなど、幅広い用途のエージェント開発に利用されています。
利用開始の方法
今回発表された各機能は、Claude Codeユーザーであればすぐに利用を開始できます。
- VS Code拡張機能 (ベータ版): VS Code Extension Marketplaceからダウンロードします。
- ターミナルとチェックポイント機能: ローカルにインストールされたClaude Codeをアップデートすることで利用可能になります。
- Claude Agent SDK: 公式ドキュメントを参照して利用を開始します。詳細はこちらなどを参照してください(※URLは仮です)。
- デフォルトモデル: Claude CodeのデフォルトモデルはSonnet 4.5に設定されています。/modelコマンドで他のモデルに切り替えることも可能です。
まとめ
今回のアップデートにより、Claude Codeは開発環境との連携を深め、自律的なタスク実行能力を向上させました。VS Code拡張機能によるIDEへの統合や、チェックポイント機能による安全なタスク委任は、開発者の生産性を大きく引き上げる可能性があります。サブエージェントやフックといった新機能は、Claude Codeが単なるコード生成AIから、開発プロセス全体を支援する「自律型エージェント」へと進化していることを示しています。開発者はこれらの強力な機能を活用することで、複雑な作業をAIに任せ、自身はより創造的な問題解決に集中できるようになるでしょう。