[ニュース解説]映画『ランボー』前日譚、スタローンがAIによる”若返り”主演を提案していた

目次

はじめに

 本稿では、俳優のシルヴェスター・スタローン氏が、映画『ランボー』シリーズの前日譚(プリクエル)について、AIによる「ディエイジング(若返り)」技術を使い、自身が18歳のジョン・ランボーを演じるという提案を行ったことについて、解説します。

参考記事

要点

  • シルヴェスター・スタローンは、自身がAIのディエイジング技術を用いて18歳のジョン・ランボーを演じる前日譚の構想を提案した。
  • スタローンは「現在のAIは十分に洗練されており、実現はそれほど大きな飛躍ではない」との見解を示した。
  • この提案は、現在俳優ノア・センティネオ主演で進められている別の前日譚企画とは無関係である。
  • スタローンは、自身が作り上げた象徴的な役柄を他の俳優が演じることの難しさについても言及している。

詳細解説

スタローン氏が語ったAI主演の構想

 1982年の『ランボー』(原題: First Blood)から40年以上にわたりジョン・ランボー役を演じてきたシルヴェスター・スタローン氏が、ポッドキャスト番組「The Playlist’s Bingeworthy」に出演し、自身が主演するランボーの前日譚のアイデアを売り込んでいたことを明かしました。

 その内容は、現在70代であるスタローン氏自身が、AIのディエイジング技術を駆使して18歳のランボーを演じるというものです。彼は「みんな私が狂っていると思っただろう」と前置きしつつも、次のように語っています。

「AIは18歳の彼(ランボー)をサイゴンで見るのに十分洗練されており、基本的に同じ画像を使える。だから、それほど大きな飛躍ではない」

 この発言から、彼は現在の技術であれば、自身の若い頃の姿をスクリーンで完全に再現できると確信していることがうかがえます。

AIによるディエイジング技術とは

 ディエイジングとは、映像技術を用いて俳優の見た目を若返らせる手法のことです。かつてはCGによる手作業での修正が主でしたが、近年はAI(人工知能)の学習能力を活用することで、より自然で高精度な若返りが可能になっています。

 映画『アイリッシュマン』でロバート・デ・ニーロらが若返った姿で登場したり、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』でハリソン・フォードの若い頃の姿が再現されたりしたのが記憶に新しいところです。スタローン氏の提案は、この技術をさらに推し進め、全編にわたって主演を担うというものでした。

実際に進行中の前日譚プロジェクト

 スタローン氏の提案とは別に、現在、ミレニアム・メディア社によってランボーの前日譚『John Rambo』の企画が実際に進められています。こちらでは、Netflixの映画『好きだった君へのラブレター』シリーズで知られる若手俳優ノア・センティネオが主演候補として交渉中と報じられています。

 スタローン氏はこのプロジェクトを認識しているものの、関与はしていないとのことです。彼は、自身が作り上げた象徴的な役を他の俳優が演じることの難しさについて、次のように警告しています。

「それは非常に、非常に難しいことだ。彼(センティネオ)は素晴らしい仕事をするかもしれないが、先入観を乗り越えなければならない。なぜなら、私は『追撃者』(Get Carter)のリメイクでそれを経験したからだ。誰もがオリジナルを愛しており、常にその先入観と戦うことになる」

 これは、オリジナル作品へのファンの強い思い入れが、新しい俳優への評価に影響を与えかねないという、彼の経験に基づいた現実的な指摘と言えるでしょう。

スタローン氏が描きたかった「もう一つの前日譚」

 実は、スタローン氏には以前から温めていた前日譚の構想がありました。2022年のThe Hollywood Reporterのインタビューでは、「ベトナム戦争に関するドキュメンタリーのようなスタイル」で、フットボールチームのキャプテンで社交的だった青年が、なぜ寡黙な戦闘マシン『ランボー』へと変貌したのかを描きたいと語っていました。

 しかし、スタジオ側は「現代を舞台に、ランボーが後継者にたいまつを渡す(世代交代する)」という物語を望んでいるようで、両者の間には構想の違いがあったようです。

まとめ

 今回明らかになったシルヴェスター・スタローン氏による「AIでの若返り主演」という提案は、彼がジョン・ランボーというキャラクターにいかに深い愛着を持っているか、そしてAI技術が今後の映画製作にどのような新しい可能性をもたらすかを示唆する、非常に興味深いものです。

 一方で、ノア・センティネオ主演で進められている公式の前日譚が、ランボーのオリジンをどのように描くのか、注目が集まります。スタローン氏の懸念する「先入観」を乗り越え、新たなファンを獲得できるのか、今後の続報を待ちたいところです。

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