[ニュース解説]AIブームで急騰するオラクル株、その背景と今後の展望

目次

はじめに

 米ソフトウェア大手オラクルの株価がAI(人工知能)関連のニュースを背景に記録的な高騰を見せました。(その後、下落し落ち着きを取り戻しました。)本稿では、AI技術の進化が、ITインフラ市場にどのような地殻変動をもたらしているのかについて解説します。

参考記事

要点

  • オラクルの株価は、AI開発に必要なクラウドサービスへの期待から、記録的な急騰を遂げた。
  • この株価上昇により、同社の時価総額は一時9330億ドルに達し、いわゆる「1兆ドルクラブ」入りが視野に入った。また、共同創業者ラリー・エリソンの個人資産も世界長者番付トップに迫る規模となった。
  • 急騰の背景には、OpenAIがオラクルと3000億ドル規模という歴史的なコンピューティングパワー契約を結んだとの報道があった。
  • 株価は翌日に調整局面を迎えたが、今後数ヶ月で受注残が5000億ドルに達するとの強気な見通しもあり、市場の期待は依然として高い。
  • 2025年におけるオラクルの株価上昇率は、米国の代表的な株価指数S&P 500や、他の大手ハイテク企業群「マグニフィセント・セブン」のパフォーマンスを上回った。

詳細解説

オラクルの株価、AIブームで記録的急騰

 2025年9月11日、オラクルの株価はAI関連の大型契約への期待を背景に最大35.9%という記録的な上昇を見せました。これにより、同社の時価総額は一時9330億ドルに達し、AppleやMicrosoftなどが名を連ねる「1兆ドルクラブ」(時価総額1兆ドル以上の企業群)の仲間入りが目前に迫りました。

 しかし、その翌日には利益確定売りなどから株価は約4%下落し、一息つく展開となりました。市場ではこれを「買い手の疲労」と見る声もありますが、専門家は「押し目買いの動きが再び現れる可能性が高い」と指摘しており、オラクルの物語はまだ終わっていないとの見方が優勢です。

なぜ今、オラクルが注目されるのか?

 オラクルといえば、多くの人がデータベース管理システムの会社というイメージを持つかもしれません。しかし、近年の同社はクラウド事業、特に「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」に注力しています。

 現在のAI、特に生成AIの開発や運用には、膨大なデータを高速で処理するための高性能な計算能力(コンピューティングパワー)、とりわけGPU(Graphics Processing Unit)が不可欠です。オラクルのOCIは、このAI開発に特化した高性能なクラウドサービスを提供しており、AI開発のインフラとしての需要が急拡大しています。

 特に注目すべきは、米Wall Street Journalが報じた「OpenAIがオラクルと3000億ドル規模の契約を締結した」というニュースです。これは歴史上でも最大級の契約であり、AI開発の最前線を走るOpenAIが、主要なインフラパートナーとしてオラクルを選んだことを意味します。この報道が、市場の期待を大きく押し上げる要因となりました。

市場の評価と今後の展望

 オラクルの好調さは、株価のパフォーマンスにも明確に表れています。参考記事に掲載されたグラフが示す通り、2025年のオラクルの株価はS&P 500指数を大幅に上回るパフォーマンスを見せています。

 同社は「受注残が今後数ヶ月で5000億ドル(約70兆円)に達する見込み」という非常に強気な業績見通しを発表しており、これが投資家の信頼を支えています。

 一方で、企業の収益力と株価を比較する指標である株価収益率(PER)を見ると、オラクルの株価はAmazonやMicrosoftといった他のクラウドサービス大手と比較して割高な水準にあります。これは、将来の成長への大きな期待が株価に織り込まれていることを示しており、今後の業績がその期待に応えられるかが焦点となります。

まとめ

 本稿では、ロイターの記事を基に、オラクルの株価急騰のニュースを解説しました。この出来事は、単なる一企業の株価の動きに留まりません。AI技術の進化が、その裏側を支えるITインフラの需要を爆発的に増大させているという、現代の産業構造の変化を象徴しています。

 これまでクラウド市場ではAmazon (AWS)やMicrosoft (Azure)が先行していましたが、AIに特化した高性能インフラという領域でオラクルが強力なプレイヤーとして存在感を増しています。AI時代の到来が、クラウド市場の勢力図を塗り替える可能性も秘めています。

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