Google広告の「AI Max」ベータ版が全世界に提供開始:AIによる広告最適化とブランドコントロールの両立

目次

はじめに

 本稿では、Google広告の新しい機能スイート「AI Max」について解説します。AI Maxは、GoogleのAI技術を最大限に活用し、検索キャンペーンのパフォーマンスを向上させるための包括的なソリューションです。

参考記事

※Google広告のヘルプページ

要点

  • Google広告の検索キャンペーン向けに、これまで段階的に提供されていたAIを活用した新機能「AI Max」が全世界でベータ版として利用可能になった
  • AI Maxは、「検索語句マッチング」と「アセットの最適化」を主な機能とし、Google AIがリアルタイムでターゲティングとクリエイティブを最適化する。
  • 「テキストに関するガイドライン」が導入され、AIが生成する広告テキストに対して、ブランドイメージを損なわないよう具体的な指示(語句の除外やメッセージの制限)を与えることが可能になった。
  • 既存のキャンペーン内でトラフィックを分割してテストする新しい実験機能が提供され、より簡単かつ迅速にAI Maxの効果を検証できるようになった。
  • Google Ads APIにおいてもサポートが開始され、API経由での設定やレポーティングが可能である。

詳細解説

「AI Max」とは何か?

 「AI Max(AI最大化設定)」とは、検索キャンペーンの効果を最大化するために、Google AIの能力を最大限に引き出す機能群のことです。これまで段階的に一部のユーザーに対してのみ提供されていましたが、今回、このAI Maxが全世界でベータ版として利用可能になりました。これまでマーケティング担当者が手動で行っていたキーワード選定や広告文作成、ターゲティング調整といった複雑な作業を、AIがリアルタイムで最適化します。

 主な機能は以下の2つです。

  • 検索語句マッチング: 広告主が設定したキーワードだけでなく、ユーザーの検索意図(インテント)をAIが深く理解し、関連性が高いと判断した検索語句に対しても広告を表示します。これにより、これまでリーチできなかった潜在顧客層へのアプローチが可能になります。
  • アセットの最適化: 登録された広告見出しや説明文、画像などの素材(アセット)を、AIがユーザーごとに最適な組み合わせで自動的に表示します。これにより、広告の関連性が高まり、クリック率やコンバージョン率の向上が期待できます。

 Googleの内部データによると、AI Maxを有効にした広告主は、同程度のコンバージョン単価(CPA)や広告費用対効果(ROAS)を維持したまま、コンバージョン数またはコンバージョン値が平均で14%向上したと報告されています。

AIによる自動化とブランド保護を両立する「テキストに関するガイドライン」

 AIによる広告文の自動生成は非常に強力ですが、「ブランドイメージにそぐわない表現が使われないか」という懸念を持つ方もいるでしょう。その課題を解決するのが、「テキストに関するガイドライン」です。

 これは、AIが生成するテキストアセットに対して、広告主が「守るべきルール」を設定できる機能です。具体的には、以下の2つの設定が可能です。

  • 語句の除外:
     広告文に含めてほしくない特定の単語やフレーズを、完全一致で除外できます。例えば、「激安」「セール」といった価格訴求を避けたい場合や、競合他社の名称を含めないようにしたい場合に有効です。キャンペーンごとに最大25個まで登録できます。
  • メッセージの制限:
     より広範なコンセプトや表現スタイルを制限する機能です。「割引を示唆する表現は避ける」「当社のブランドトーンは、明確さと分かりやすさである」といった、より抽象的な指示をAIに与えることができます。これにより、ブランドの一貫性を保ちながらAIを活用できます。キャンペーンごとに最大40個まで登録可能です。

 この機能は、P-MAXキャンペーンとAI Maxを有効にした検索キャンペーンで利用できます。

3. 簡単かつ迅速に効果を検証できる新しいテスト機能

 AI Maxの導入効果を確かめるために、新しいテスト手法が導入されました。従来のカスタムテストでは、テスト用にキャンペーンを複製する必要があり、設定が煩雑で結果が出るまでに時間もかかりました。

 新しいテスト機能は、既存のキャンペーンのトラフィックと予算を分割して行います。例えば、トラフィックの50%をAI Maxを有効にした「介入群」、残りの50%を無効にした「対照群」として配信し、パフォーマンスを直接比較します。

 この手法には、以下のようなメリットがあります。

  • 迅速な結果: 1つのキャンペーン内でテストするため、短期間で有意なデータを得られます。
  • 設定エラーの抑制: キャンペーンが1つであるため、設定の同期漏れなどのミスが起こりにくくなります。
  • 学習期間の短縮: データが分散しないため、AIの学習期間が短縮されることが期待できます。

 これにより、広告主はより手軽にAI Maxの効果を試し、自社のアカウントにとって有益かどうかを判断できます。

4. 技術者向け情報:Google Ads APIでの対応

 Google Ads APIを利用している開発者や運用者向けにも、AI Maxのサポートが開始されています。v21(2025年8月6日リリース)以降のバージョンで対応しています。

  • 有効化: Campaign リソースの ai_max_setting.enable_ai_max フィールドを true に設定することで、検索キャンペーンのAI Maxを有効にできます。
  • 検索語句マッチングの無効化: キャンペーン単位でAI Maxを有効にしつつ、特定の広告グループでは検索語句マッチングを無効にしたい場合、AdGroup.ai_max_ad_group_setting.disable_search_term_matching を使用します。
  • 新しいレポートビュー: ai_max_search_term_ad_combination_view という新しいレポートビューが追加されました。これにより、広告表示につながった検索語句、見出し、ランディングページの組み合わせごとのパフォーマンスを確認できます。

まとめ

 今回ご紹介した「AI Max」は、Google AIの力を活用して検索広告の運用を新たなステージへと引き上げる機能です。特に、AIによるクリエイティブの自動最適化と、「テキストに関するガイドライン」によるブランドコントロールを両立できるようになった点は、多くの広告主にとって重要なアップデートと言えるでしょう。

 また、簡単かつ迅速に効果を試せる新しいテスト機能も用意されているため、導入のハードルは大きく下がっています。

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