はじめに
近年、テキストや画像から動画を生成するAI技術が急速に進化しています。その中でも注目を集めているGoogleの動画生成AIモデル「Veo 3」および「Veo 3 Fast」について、重要なアップデートが発表されました。
本稿では、Google Developers Blogの「Veo 3 and Veo 3 Fast – new pricing, new configurations and better resolution」という記事を基に、今回のアップデートで発表された価格改定、新機能、そして具体的な利用方法について解説します。
参考記事
- タイトル: Veo 3 and Veo 3 Fast – new pricing, new configurations and better resolution
- 発行元: Google Developers Blog
- 発行日: 2025年9月8日
- URL: https://developers.googleblog.com/ja/veo-3-and-veo-3-fast-are-now-generally-available-and-more-affordable-than-ever/
要点
- 利用価格が大幅に引き下げられ、Veo 3は$0.40、Veo 3 Fastは$0.15になった。
- モバイルやSNS向けの縦型動画(9:16アスペクト比)と、より高品質な1080p HD解像度の出力に新たに対応したことである。
- これらの新機能は、APIのパラメータを追記するだけで簡単に利用可能であること。
詳細解説
より利用しやすくなった新しい価格設定
今回のアップデートで、利用価格が大幅に引き下げられました。具体的な価格変更は以下の通りです。
モデル | 旧価格(1秒あたり) | 新価格(1秒あたり) | 値下げ率 |
Veo 3 | $0.75 | $0.40 | 約47% OFF |
Veo 3 Fast | $0.40 | $0.15 | 約62.5% OFF |
この価格改定により、個人開発者から企業まで、より多くのユーザーが高品質な動画生成AIを試したり、サービスに導入したりする際の経済的なハードルが大きく下がりました。
待望の新機能:縦型動画とHD画質への対応
現代のコンテンツ消費の主流に合わせて、2つの実用的な新機能が追加されました。
1. 縦型動画(9:16アスペクト比)のサポート
スマートフォンでの視聴が一般的なSNS(YouTubeショート、TikTok、Instagramリールなど)に最適な、縦型フォーマットの動画を生成できるようになりました。
APIでリクエストを送る際に、aspectRatio パラメータを ‘9:16’ に設定するだけで、簡単に縦型動画を出力できます。
2. 1080p HD解像度のサポート
より高画質でプロフェッショナルな映像制作のニーズに応えるため、1080pのHD解像度での出力が可能になりました。
こちらも同様に、resolution パラメータを ‘1080p’ に設定するだけで、精細でクリアな動画を生成できます。
Pythonによる具体的な実装方法
これらの新機能を利用する方法を解説します。以下のコードは、最新のgoogle-genaiライブラリをインストールすることで実行できます。
# 必要なライブラリをインポートします
import time
from google import genai
from google.genai import types
# APIクライアントを初期化します
client = genai.Client()
# 動画生成処理を開始します
operation = client.models.generate_videos(
# 使用するモデルを指定します(高速版のVeo 3 Fast)
model="veo-3.0-fast-generate-001",
# 動画の内容を指示するプロンプト
prompt="a close-up shot of a golden retriever playing in a field of sunflowers",
# 生成に関する設定
config=types.GenerateVideosConfig(
# ネガティブプロンプト(生成してほしくない要素)
negative_prompt="barking, woofing",
# 【新機能】アスペクト比を9:16(縦型)に設定
aspect_ratio="9:16",
# 【新機能】解像度を1080pに設定(720pも指定可能)
resolution="1080p",
),
)
# 動画の生成が完了するまで待機します
print("動画生成を開始しました。完了までお待ちください...")
while not operation.done:
time.sleep(20) # 20秒ごとに進捗を確認
operation = client.operations.get(operation)
print(operation)
print("動画生成が完了しました。")
# 生成された動画を取得します
generated_video = operation.response.generated_videos[0]
# ファイルとして保存します
# client.files.download(file=generated_video.video) # 必要に応じてダウンロード
generated_video.video.save("golden_retriever.mp4")
print("動画を 'golden_retriever.mp4' として保存しました。")
このように、`config` の中で `aspect_ratio` と `resolution` を指定するだけで、新しいフォーマットの動画を簡単に生成できることがわかります。また、生成処理は非同期で行われ、`operation.done`で完了を確認する仕組みになっています。
生成された動画の権利と透かし
Veo 3によって生成されたすべての動画には、人間の目には見えないデジタル透かし「SynthID」が含まれます。これは、コンテンツがAIによって生成されたものであることを識別するための技術です。
まとめ
今回のアップデートにより、より手頃な価格で、かつより実用的なフォーマット(縦型動画、HD画質)で利用できるようになりました。開発者やクリエイターにとって、表現の可能性を大きく広げる強力なツールとなることが期待されます。今後、SNSコンテンツ制作、広告、映像制作のプリビジュアライゼーション(事前視覚化)など、様々な分野での活用が加速することが予想されます。