はじめに
本稿では、Googleが新たに発表した検索体験「AIモード」の日本語対応について、Googleの公式ブログをもとに解説します。この新機能は、情報収集の方法を大きく変える可能性を秘めています。
参考記事
- タイトル: AI Mode is now available in five new languages around the world.
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年9月8日
- URL: https://blog.google/products/search/ai-mode-expands-more-languages/
- タイトル: Google Doodles show how AI Mode can help you learn
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年9月8日
- URL: https://blog.google/products/search/google-doodles-show-how-ai-mode-can-help-you-learn/
- タイトル: Google 検索における「AI モード」を日本語で提供開始
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年9月9日
- URL: https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/ai-mode-search/
要点
- Googleの最も強力なAI検索体験である「AIモード」が、日本語を含む5つの新しい言語で利用可能になった。
- この機能は、検索に特化してカスタマイズされたAIモデル「Gemini 2.5」を基盤としている。
- 単なる機械的な翻訳ではなく、各言語が持つ地域性や文化的なニュアンスを深く理解し、より関連性の高い情報を提供することを目的としている。
- ユーザーは複雑で曖昧な質問を自然な文章で投げかけることができ、AIが生成した詳細な説明や、関連するウェブサイトへのリンクを受け取れる。
- ユーザーの複雑な質問を複数のサブトピックに分解し、裏側で検索を実行する「クエリファンアウト」技術により、網羅的で深い回答を生成する。
- テキストだけでなく、音声や画像(カメラ)を使ったマルチモーダルな質問が可能である。
詳細解説
「AIモード」とは何か?
「AIモード」とは、従来のキーワード検索とは一線を画す、新しい対話型の検索体験です。Google検索の結果画面に専用のタブとして表示され、ユーザーが知りたいことについて複雑な質問を投げかけると、AIがウェブ上の膨大な情報を統合・要約し、包括的な回答を文章で生成してくれます。
これまでの検索が「関連性の高いウェブサイトのリスト」を提示するものであったのに対し、AIモードは「質問に対する直接的な答え」そのものを生成する「アンサーエンジン」としての側面が強いのが特徴です。



AIモードを支える技術的な仕組み
この高度な検索体験は、いくつかの重要な技術によって支えられています。
1. 頭脳となるAIモデル「Gemini 2.5 カスタムバージョン」
AIモードの中核を担っているのは、Googleが開発した高性能AIモデル「Gemini 2.5」を検索用に特別にカスタマイズしたバージョンです。このAIは、高度な言語理解能力、推論能力、そして複数の形式の情報を同時に扱うマルチモーダル能力を備えています。単にキーワードに一致するページを探すだけでなく、質問の文脈やニュアンスを深く理解することで、より的確な回答を生成できます。
2. 質問を賢く分解する「クエリファンアウト」技術
AIモードのもう一つの重要な技術が「クエリファンアウト」です。これは、ユーザーからの複雑な一つの質問を、AIが内部で複数の小さな質問(サブクエリ)に分解し、それらのサブクエリに対して自動で検索を実行する仕組みです。 京都旅行を計画する場合では、「京都の伝統工芸体験」「歴史的な名所」「京都駅周辺のおすすめディナー」といったように質問を分解し、それぞれに最適な情報をウェブから収集します。そして、集めた情報を統合して最終的な回答を組み立てるのです。これにより、一つの側面だけでなく、質問に含まれる様々な要求を網羅した、深く掘り下げた回答が可能になります。
3. テキストだけではない「マルチモーダル検索」
AIモードの大きな特徴は、質問の形式がテキストに限定されない点です。マイクアイコンをタップして音声で質問したり、スマートフォンのカメラで撮影した画像を使って質問したりすることも可能です。 例えば、海外のレストランでメニューが読めない時に、その写真を撮って「このメニューが何かわからないんだけど、どれがベジタリアン向けか教えて」と質問すると、AIが画像内の文字を認識・翻訳し、ベジタリアン向けのメニューを料理の内容とともに教えてくれます。このように、現実世界の疑問をそのまま投げかけられるのが、マルチモーダル検索の強みです。
ウェブとの共存と品質への取り組み
AIが回答を生成するからといって、ウェブサイトが不要になるわけではありません。Googleは、ウェブ全体の素晴らしいコンテンツにユーザーが出会うことを支援するという使命を重視しています。
AIモードが生成した回答には、その情報の根拠となったウェブサイトへのリンクが含まれており、ユーザーはより詳しい情報を確認したり、情報の真偽を確かめたりすることができます。
また、GoogleはAIモードの品質と信頼性にも注意を払っています。AIによる回答はGoogleの品質・ランキングシステムに基づいており、信頼性が低いと判断されたトピックについては、AIの回答を表示せず、従来の一連のウェブ検索結果を表示するようになっています。Googleは、AIモードがまだ初期段階の製品であり、継続的に改善していく姿勢を示しています。
利用方法
AIモードは、PCやスマートフォンのブラウザで google.com/ai にアクセスするほか、Google検索結果画面の上部に表示される専用タブ、またはAndroidやiOSのGoogleアプリ内から利用することができます。(順次利用できるようになっていくとのこと)
まとめ
今回発表されたGoogle検索の「AIモード」日本語対応は、私たちが情報を手に入れるための手段が、新たなステージに進んだことを示すものです。Gemini 2.5という強力なAIを搭載したことで、検索は「探す」行為から、AIと「対話し、答えを導き出す」行為へと進化しつつあります。特に、複雑な事柄の調査や学習において、その真価を発揮するでしょう。まだ始まったばかりの機能ですが、今後の情報収集のスタンダードとなる可能性を秘めた、注目のアップデートと言えます。


