[開発者向け]Gemini Code Assistがアップデート:「Agent Mode」の一般提供の開始や、IDEへの統合改良でより使いやすく

目次

はじめに

 本稿では、Google Developers Blogで2025年8月21日に公開された記事「What’s new in Gemini Code Assist」を元に、AIコーディング支援ツール Gemini Code Assist の最新アップデートについて、日本の開発者や技術に興味を持つ読者の方々にも分かりやすく解説します。今回のアップデートでは、AIがより能動的に開発者を支援する「Agent Mode」の一般提供開始や、IDE(統合開発環境)、CLI(コマンドラインインターフェース)における機能強化が含まれており、開発の生産性をさらに向上させる内容となっています。

参考記事

・本稿中の画像に関しては特に明示がない場合、引用元記事より引用しております。
・記載されている情報は、投稿日までに確認された内容となります。正確な情報に関しては、各種公式HPを参照するようお願い致します。
・内容に関してはあくまで執筆者の認識であり、誤っている場合があります。引用元記事を確認するようお願い致します。

要点

  • Gemini Code Assistに、複雑なコーディングタスクをAIが計画し、開発者の承認を得ながら複数ファイルにまたがる変更を実行する「Agent Mode」が導入された。VS CodeとIntelliJでプレビュー版として利用可能である。
  • IDEの体験が向上し、チャット応答の途中停止機能や、VS Codeでのコード補完のパフォーマンス向上などが実装された。
  • Gemini CLIがGitHub Actionsに対応し、Issueのトリアージやプルリクエストのレビューといった定型業務を自動化できるようになった。また、VS Codeとの連携が深まり、より文脈に応じたコード生成が可能になった。

詳細解説

 今回のアップデートは、大きく分けて「Agent Modeの導入」「IDEの改善」「Gemini CLIのアップデート」の3つの柱で構成されています。それぞれについて、前提知識も補足しながら詳しく見ていきましょう。

「Agent Mode」のIDEへの導入

 今回のアップデートでは「Agent Mode」をIDEでPより利用できやすくなりました。Agent Modeは単一の指示で完結しない、複雑で複数ステップにわたるタスクを解決するために設計された対話形式の機能です。

  • 前提知識:AIエージェントとは?
     AIの文脈における「エージェント」とは、単に指示に応答するだけでなく、与えられた目標を達成するために自律的に計画を立て、ツールを使いこなし、タスクを実行するプログラムを指します。Gemini Code AssistのAgent Modeは、このエージェントの考え方をコーディング支援に応用したものです。
  • 具体的な動作
     例えば、「ショッピングカートのモデル、ビュー、コントローラーをリファクタリングして、適用された割引コードを表示するように変更してほしい」といった、複数のファイルにまたがる複雑な修正を依頼したとします。
     従来のAIチャットでは、ファイルごとに指示を出す必要がありました。しかしAgent Modeでは、Geminiがまずタスク達成のための詳細な計画を提示します。開発者はその計画を確認し、承認、あるいは修正を依頼することができます。承認されると、Geminiが計画に沿ってコードの変更を実行します。このように、AIが自動で作業を進める前に人間が介在し、すべてのステップを管理できる点が大きな特徴です。

各IDEでの対応

VS Code: プレビュー版として全ユーザーが利用可能になりました。チャット履歴の永続化や、インラインでの差分表示機能の改善など、多くの機能強化が行われています。

IntelliJ: こちらもStableリリースで利用可能になりました。変更をレビューするだけでなく、エージェントに作業を任せる「自動承認モード」も選択できます。

開発がさらに快適になるIDEの機能改善

 日々の開発作業で利用するIDE(統合開発環境)での体験も向上しています。

  • チャット応答の停止機能: 長い、あるいは意図しない応答が生成され始めた際に、即座に停止できるようになりました。これにより、時間を無駄にすることなく、すぐに次の指示に移ることができます。
  • 思考プロセスの可視化 (IntelliJ): Geminiが応答を生成する前に、どのような思考プロセスを経ているかを示す「thinking tokens」が導入され、AIの挙動がより透明になりました。
  • コード補完のパフォーマンス向上 (VS Code): コード補完の提案速度と精度が向上し、よりスムーズなコーディングが可能になります。
  • プレビュー機能の一般提供: これまでプレビュー版として提供されていた「チェックポイントへの復元」や「選択したコードをコンテキストに追加」などの機能が正式版となり、安定して利用できるようになりました。

コマンドラインとCI/CDを強化するGemini CLIアップデート

  • Gemini CLI GitHub Actions の登場:
     これは、GitHubリポジトリ上で動作するAIコーディングチームのようなものです。新しいIssueが作成されたり、プルリクエストが送られたりすると、それをトリガーとしてGeminiが非同期でタスクを処理します。
    • インテリジェントなIssueのトリアージ: Issueの内容を理解し、適切なラベルを付けたり、担当者を提案したりします。
    • プルリクエストレビューの高速化: 変更内容をレビューし、改善点を提案したり、簡単な修正を自動で行ったりします。
    • オンデマンドでの協力: 開発者がIssueやプルリクエストのコメントでGeminiにメンションすることで、特定のタスクを依頼できます。
  • VS Codeとの連携強化:
     Gemini CLIが、VS Codeで現在開いているファイルや選択しているテキストを文脈として認識できるようになりました。これにより、CLIからGeminiを呼び出す際に、より的確で状況に即したコード生成や提案が可能になります。生成されたコードの差分もエディタ上で直接確認・編集できます。
  • カスタムスラッシュコマンド:
     git commitのメッセージ生成など、繰り返し行うプロンプトをカスタムコマンドとして登録できるようになりました。これにより、定型作業をさらに効率化できます。

まとめ

 今回のGemini Code Assistのアップデートにより、AIは単にコードを補完したり、質問に答えたりするだけのツールから、開発プロジェクトの計画段階から参加し、複雑なタスクを自律的に実行する「パートナー」へと進化しました。特にAgent Modeは、大規模なリファクタリングや新機能追加といった、これまで多大な時間と労力を要した作業の進め方を大きく変える可能性を秘めています。また、GitHub Actionsとの連携は、個人開発者だけでなく、チーム開発全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

 これらの新機能を活用することで、開発者はより創造的で本質的な作業に集中できるようになります。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次