はじめに
本稿では、Googleの公式ブログで発表された「9 ways AI makes Pixel 10 our most helpful phone yet」という記事を基に、次期スマートフォン「Pixel 10」に搭載されると見られるAIを活用した9つの新機能について、詳しく解説します。スマートフォンの頭脳であるチップの進化が、私たちの日常をどのように変えていくのかを見ていきましょう。
参考記事
- タイトル: 9 ways AI makes Pixel 10 our most helpful phone yet
- 著者: Tyler Kugler, Product Manager
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年8月20日
- URL: https://blog.google/products/pixel/google-pixel-10-ai-features-updates/
要点
- Pixel 10には、Googleが独自に設計した最新チップ「Tensor G5」が搭載される。
- Tensor G5は、Google DeepMindと共同設計され、最新のオンデバイスAIモデル「Gemini Nano」を動作させる初のチップである。
- オンデバイスAIの強化により、プライバシーを保護しつつ、多くのAI機能がスマートフォン上で直接実行可能になる。
- アプリ間の情報を連携させ、ユーザーが必要とする操作を予測して提案する「Magic Cue」機能が導入される。
- 通話中のリアルタイム翻訳や、不在着信メッセージの文字起こしなど、コミュニケーションを支援する機能が進化している。
- 文章作成支援、AIによるジャーナリング、鼻歌からの作曲など、創造性を刺激する新たな機能が追加される。
詳細解説
Pixel 10で利用可能になるとされる9つのAI機能を、一つずつ掘り下げて解説します。
1. 最も強力なAIチップ「Tensor G5」の搭載
Pixel 10シリーズの心臓部には、Googleが独自に開発した第5世代のチップ「Tensor G5」が搭載されます。このチップは、GoogleのAI研究開発部門であるDeepMindと共同で設計されており、特にAI処理性能が大幅に向上しています。
最大の特長は、Googleの最新AIモデルである「Gemini Nano」をスマートフォン上で直接動かす(オンデバイスで実行する)ことができる最初のチップである点です。これにより、インターネット接続を必要としない場面が増え、処理の高速化とプライバシーの向上が期待できます。
また、Pixel 10 Proなどの上位モデルでは、画像生成AI「Imagen 4」や動画生成AI「Veo 3」といった高度なクリエイティブツールを利用できる「Google AI Pro」が1年間無料で提供されるとのことです。
2. アプリを横断して先回りするアシスタント「Magic Cue」
「Magic Cue」は、Gmail、カレンダー、メッセージといった複数のアプリに散らばった情報をAIが連携させ、ユーザーが必要とするであろう情報や操作を適切なタイミングで提案してくれる機能です。
例えば、友人から「飛行機は何時に着くの?」とメッセージが来た場合、Magic CueがGmailにあるフライト旅程を自動で参照し、到着時刻をメッセージアプリ上でワンタップで返信する提案をしてくれます。航空会社に電話をかける際には、予約情報を自動で画面に表示するなど、状況に応じた細やかなサポートを提供します。
この機能もTensor G5とGemini Nanoによってデバイス上で完結するため、個人の情報が外部に送信されることなく、安全に利用できます。
3. 通話で言語の壁をなくす「Voice Translate」
電話越しの会話をリアルタイムで翻訳してくれる機能です。Tensor G5の処理能力を活かし、お互いの声を維持したまま、自然な形で翻訳音声が相手に届きます。これにより、海外のホテル予約や国際電話など、これまで言語の壁があったコミュニケーションがよりスムーズになります。
日本語から英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語など10言語への翻訳、またその逆の翻訳に対応しています。
4. 不在着信をAIがテキスト化する「Take a Message」
電話に出られない時に相手が残した留守番電話のメッセージを、リアルタイムで文字起こししてくれる機能です。さらに、AIがメッセージの内容を分析し、「折り返し電話する」「カレンダーに予定を追加する」といった次のアクションを提案してくれます。これにより、聞き逃しを防ぎ、迅速な対応が可能になります。
5. 視覚的なサポートが加わった「Gemini Live」
Googleの対話型AI「Gemini」を、よりインタラクティブに利用できる機能です。スマートフォンのカメラを通して見ているものをGeminiが認識し、対話できるだけでなく、Pixel 10では画面上に直接マーカーなどを表示して視覚的なガイダンスを行えるようになります。例えば、複雑な機械の操作方法を尋ねた際に、操作すべきボタンを画面上で指し示してくれるような使い方が可能になります。
6. AIリサーチアシスタント「NotebookLM」の連携強化
AIを活用したノートアプリ「NotebookLM」が、スクリーンショットやレコーダーアプリと深く連携します。Webページや資料をスクリーンショットで保存すると、AIが関連するノートブックへの追加を提案してくれます。また、会議や講義を録音した音声ファイル(文字起こし含む)を直接ノートブックに取り込み、情報の整理や要約に活用できます。
7. 自分と向き合う時間を作る「Pixel Journal」
日々の出来事や考えを記録するための、プライベートなジャーナリング(日記)アプリです。オンデバイスAIがユーザーの思考を整理する手助けとなるような執筆のヒント(プロンプト)を生成したり、長期的な記録から思考のパターンや目標への進捗を分析してくれたりします。データは完全にデバイス内に保存され、ロック機能によってセキュリティも確保されます。
8. Gboardに搭載される文章作成支援「Writing Tools」
標準キーボードアプリであるGboardに、高度な文章作成支援機能が組み込まれます。単なるスペルチェックだけでなく、文章のトーンを「よりプロフェッショナルに」あるいは「よりカジュアルに」といった形で書き換える提案をしてくれます。音声入力で修正を指示することも可能で、メッセージ作成の効率と質を向上させます。
9. レコーダーアプリで鼻歌から作曲
レコーダーアプリに録音した鼻歌や歌声の断片を、AIが本格的な音楽トラックに変換してくれる機能です。好みの音楽スタイルを選択するだけで、手軽にオリジナルの楽曲を作成できます。ふとした瞬間に浮かんだメロディを形にする、新しい創造的なツールとなりそうです。
まとめ
本稿では、Google Pixel 10に搭載が見込まれる9つの新しいAI機能について解説しました。最新の独自チップ「Tensor G5」とオンデバイスAIモデル「Gemini Nano」の組み合わせは、スマートフォンの役割を、単なる情報端末から、ユーザー一人ひとりの状況を理解し、先回りしてサポートする真のパーソナルアシスタントへと進化させる可能性を秘めています。
特に、多くの処理をデバイス内で完結させる「オンデバイスAI」というアプローチは、プライバシーを重視する現代において重要な技術です。これらの機能が、私たちのコミュニケーションや情報整理、そして創造性をどのように豊かにしてくれるのか、期待が膨らみます。