［ニュース解説］Amazon CEO発言から読み解くAI時代の雇用変化

2025-07-02

はじめに

　生成AI（人工知能）の急速な発展により、AmazonのCEOが自社の雇用について発言を行いました。本稿では、CNBCの「Amazon CEO Jassy says AI will lead to ‘fewer people doing some of the jobs’ that get automated」という記事をもとに、AI時代における雇用の変化について解説します。

引用元記事

タイトル： Amazon CEO Jassy says AI will lead to ‘fewer people doing some of the jobs’ that get automated
著者： Annie Palmer
発行元： CNBC
発行日： 2025年6月30日
URL： https://www.cnbc.com/2025/06/30/amazon-ceo-says-ai-will-mean-fewer-people-do-jobs-that-get-automated.html

要点

Amazon CEO Andy Jassyは、生成AIの急速な普及により、自動化される職種において将来的に必要な従業員数が減少すると明言した。
一方で、新しい種類の職種も生まれると述べ、AIが従業員を「単純作業から解放し、すべての仕事をより興味深いものにする」と説明した。
同社は2022年以降27,000人以上の人員削減を実施しており、AI導入と並行して組織の効率化を進めている。この動きはテクノロジー業界全体に広がっており、Salesforce、Shopify、Microsoft、Klarnaなどの企業でも同様の変化が見られる。

詳細解説

AIエージェントがもたらす労働環境の変化

　Jassy CEOが特に注目しているのが「AIエージェント」と呼ばれる技術です。これは、ユーザーや他のシステムの代わりにタスクを実行するAIを活用したソフトウェアシステムのことを指します。

　AIエージェントの具体的な機能には以下のようなものがあります：

自然言語での指示理解：人間が普通の言葉で指示を出すだけで作業を実行
情報収集と要約：ウェブや各種データソースを検索し、結果をまとめる
深い調査研究：複雑な課題について包括的な調査を実施
コード作成：プログラミング作業の自動化
異常検知：データの中から問題点を発見
言語・コード翻訳：様々な言語やプログラミング言語間での変換

　Amazon社内では既に1,000以上のAIサービスとアプリケーションが稼働中または開発中であり、これは「計画している全体のほんの一部分」とJassy氏は述べています。

他企業での具体的な変化

　Amazonだけでなく、テクノロジー業界全体でAIによる業務効率化と人員調整が進んでいます：

Salesforce（セールスフォース）：Marc Benioff CEOによると、AIが同社の業務の30〜50%を実行している状況です。
Klarna（クラルナ）：オンライン決済サービス大手のKlarnaは、AI投資と自然減により約40%の人員削減を達成したと発表しています。
Microsoft（マイクロソフト）：従業員に日常業務でのAI技術採用を奨励し、数千人規模の人員削減を計画していると報道されています。
Shopify（ショッピファイ）：従業員は追加の人員やリソースを要求する前に、「AIを使用して望む成果を達成できない理由」を証明することが求められています。

Amazonの具体的なAI活用事例

　Amazonは社内業務の「事実上あらゆる領域」で生成AIを活用しています：

物流・倉庫業務：

在庫配置の最適化
需要予測の精度向上
倉庫ロボットの効率化

顧客サービス：

チャットボットの高度化
商品詳細ページの改善

ソフトウェア開発：

AIコーディングアシスタントにより、プログラマーの4,500年分の作業時間を節約（2024年実績）

業界全体への影響と統計

　この変化は単一企業の問題ではありません。ゴールドマン・サックスの調査によると、生成AIは全産業の約25%の仕事を自動化する可能性があります。

　また、人材コンサルティング会社Challenger, Gray & Christmasの報告では、2025年最初の5ヶ月間だけで「技術的アップデート」（AI導入を含む）により20,000人が解雇されています。

株価への影響

　興味深いことに、これらのAI投資にも関わらず、Amazonの株価は2025年年初来横ばいで推移しており、5.5%上昇したナスダック指数を下回っています。同社株価は2月の最高値から約10%下落している一方、Meta、Microsoft、Nvidiaといった他のメガテック企業は史上最高値近辺で取引されています。

　これは市場がAmazonのAI戦略の成果をまだ十分に評価していない可能性を示唆しています。

まとめ

　Amazon CEO Andy Jassyの発言は、AI時代における雇用の根本的な変化を示しています。自動化により一部の職種で雇用が減少する一方で、より創造的で戦略的な業務に従事する新しい職種が生まれると予想されます。

　重要なのは、この変化を脅威ではなく機会として捉えることです。Jassy氏が述べるように、AIは従業員を単純作業から解放し、より興味深く価値の高い業務に集中できる環境を作り出します。　日本企業においても、この世界的な変化に適応するため、AI技術の導入、従業員の継続的な学習支援、組織構造の柔軟化が急務となっています。変化に対応できる企業とそうでない企業の間で、競争優位性に大きな差が生まれる可能性があります。