はじめに
本稿では、Googleが2025年5月21日に公開した公式ブログ記事「More opportunities for your business on Google Search」を基に、AI技術の進化がGoogle検索と検索広告にどのような新しい機会をもたらしているのかを解説します。特に、AI Overviews と AI Mode という新しい機能における広告掲載の動向は、今後のデジタルマーケティング戦略を考える上で非常に重要です。
引用元記事
- タイトル: More opportunities for your business on Google Search
- 発行元: Google Ads & Commerce Blog
- 発行日: 2025年5月21日
- URL: https://blog.google/products/ads-commerce/google-search-ai-brand-discovery/
要点
- Google検索におけるAIの活用は、ユーザーが情報を得る方法を革新し、AI Overviews や AI Mode といった新機能を通じてブランドとユーザーが出会う新たな接点を創出しているのである。
- AI Overviewsは、特に米国やインド市場においてGoogle検索の利用を10%以上増加させ、ユーザー満足度の向上と検索頻度の増加に貢献しており、商用クエリの量も増加傾向にある。
- AI Overviews内に表示される広告は、ユーザーが情報を求めているまさにその瞬間に、関連性の高いビジネス、製品、サービスへと繋がるため、ユーザーにとって有益であると評価されている。
- AI Overviewsにおける検索広告とショッピング広告は、米国でデスクトップ版にも拡大され、今後、英語圏の他の国々へもモバイル版・デスクトップ版共に展開が予定されている。
- より複雑な質問に対応するAI検索機能 AI Mode においても広告のテストが開始されており、AIによる回答の下部や回答内に統合される形で広告が表示される可能性がある。
- 既存の Performance Maxキャンペーン、ショッピングキャンペーン、部分一致を利用した検索キャンペーン(AI Max for Search campaignsを含む) を活用している広告主は、これらの新しい広告枠に広告を掲載できる対象となる。
詳細解説
AIが変えるGoogle検索の未来と広告の新たな役割
Googleでは、年間5兆回以上もの検索が行われていると報告されていますが、AI技術の進化は、ユーザーが問いかける質問の種類をさらに拡大させています。その中でも、AI Overviews(AIによる概要表示) は、過去10年間で最も成功した検索機能の一つとして注目されています。
AI Overviewsとは? なぜ重要なのか?
AI Overviews とは、ユーザーが検索した際に、AIが関連情報を集約し、簡潔な概要として検索結果の上部に表示する機能です。これにより、ユーザーは求める情報へより迅速にたどり着けるようになります。Googleによると、この機能が導入された主要市場(米国やインドなど)では、AI Overviewsが表示される種類のクエリにおいて、Google検索の利用が10%以上増加したとのことです。さらに、ユーザーは検索結果に対する満足度が高まり、より頻繁に検索を行うようになる傾向が見られ、特にビジネスに繋がりやすい商用クエリ(商品購入やサービス利用を検討しているユーザーによる検索)の量も増加しています。これは、広告主にとって、新しいブランドや製品を発見しようとしている潜在顧客と接触する機会が増えることを意味します。
AI Overviews内に表示される広告は、ユーザーがまさに情報を必要としているタイミングで、関連性の高いビジネス、製品、サービスへとスムーズに誘導する役割を果たします。例えば、「乾燥肌向けの保湿クリーム おすすめ」と検索したユーザーに対して、AI Overviewsが製品の比較や選び方のポイントを提示すると同時に、関連性の高い保湿クリームの広告が表示されるといった具合です。

AI Overviewsにおける広告の展開
これまで主にモバイルで提供されていたAI Overviews内の検索広告とショッピング広告は、米国においてデスクトップにも拡大されました。さらに、2025年後半には、英語を利用する他の国々でもモバイルとデスクトップの両方で展開される予定です。この拡大により、企業はユーザーの意思決定プロセス(情報収集から購買まで)の様々な段階で、より多くの接点を持つことができるようになります。
より高度なAI検索「AI Mode」と広告の可能性
Googleは、さらに高度なAI検索機能である AI Mode のテストも開始しています。これは、ユーザーが抱える複雑な質問に対して、AIが詳細な回答を生成し、必要に応じて深掘りするための追加の質問や関連リンクを提示するものです。
AI Mode における広告は、AIが生成した回答の下部や、回答内容に自然に統合される形で表示されることが検討されています。例えば、あるユーザーが「限られた予算でスモールビジネス向けのウェブサイトを構築する方法」をAI Modeで検索したとします。AIは、ステップバイステップのガイド、製品選択のヒント、ターゲット顧客との繋がり方、テストや公開に至るまでの包括的な情報を提供します。その過程で、ウェブサイトビルダーが次のステップとして適切であると判断された場合、関連するウェブサイトビルダーの広告が表示される、といった活用方法が考えられます。ユーザーはそこからさらに、ビジネスアイデアの検討、開発すべきコンテンツの種類、ターゲット顧客の分析など、より深い質問を続けることができます。

日本の広告主にとっての準備と考察
現時点では、AI OverviewsやAI Modeにおける広告展開は主に英語圏が中心ですが、将来的には日本市場にも導入される可能性が高いと考えられます。日本の広告主やマーケターは、今のうちからこれらの新しい広告フォーマットの特性を理解し、準備を進めておくことが重要です。
具体的には、Googleが推奨しているように、Performance Maxキャンペーン、ショッピングキャンペーン、そして部分一致キーワードを積極的に活用した検索キャンペーン(特にAI Max for Search campaigns) を利用している広告主は、これらの新しいAI主導の広告枠に広告が掲載される対象となります。これらのキャンペーンタイプは、AIによる自動最適化を前提としており、AI OverviewsやAI Modeのような新しい広告配信面とも親和性が高いと言えます。
また、Googleは広告主向けに 「AI Essentials」 というガイドラインを提供しており、AIを活用して新しい顧客との繋がりを促進するためのベストプラクティスを紹介しています。これらの情報を参考に、自社の広告戦略を見直すことが求められるでしょう。

まとめ
Google検索におけるAI技術の統合は、ユーザー体験を向上させるだけでなく、広告主にとっても新たなビジネスチャンスをもたらします。AI Overviews や AI Mode といった新機能は、ユーザーが情報を探し、意思決定を行うプロセスにおいて、より自然な形でブランドと接触する機会を提供します。
これらの変更は、広告クリエイティブの関連性や、AIによる自動最適化を前提としたキャンペーン設計の重要性を一層高めるものです。
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