［Google I/O 2025］AIが広告運用をアシスト！Google Adsの新機能「エージェント」と「Marketing Advisor」を解説

2025-05-22

はじめに

　本稿では、Google Adsが2025年5月21日に発表したブログ記事「Drive peak campaign performance with new agentic capabilities」を基に、デジタルマーケティングの未来を大きく変える可能性を秘めた新しいAIエージェント機能とMarketing Advisorについて解説します。

引用元記事

タイトル: Drive peak campaign performance with new agentic capabilities
発行元: Google Ads (Google Blog)
発行日: 2025年5月21日
URL: https://blog.google/products/ads-commerce/ai-agents-marketing-advisor/

要点

Googleは、Google AdsおよびGoogle Analyticsに、マーケターの業務を支援するAIエージェント機能を導入する。
この機能は、キャンペーンの初期設定から作成、レポーティング、問題解決までをサポートし、手作業の削減とパフォーマンス向上を目指すものである。
AIエージェントは、広範なデータセット、ランディングページ、アセット、リアルタイムのパフォーマンスデータから学習し、マーケターのビジネス目標達成を支援する。
Google Adsでは、キーワードやクリエイティブの提案、関連性の高い広告グループの作成などをAIが代行・支援する。
Google Analyticsでは、データからインサイトやトレンドを能動的に提示し、データに基づいた意思決定を容易にする。
さらに、Chromeブラウザ拡張機能として「Marketing Advisor」を開発中である。これは、Google Ads、Google Analytics、ヘルプセンター、ウェブサイト、CMSシステムなど、複数のプラットフォームを横断してマーケティング業務を支援するAIエージェントである。
Marketing Advisorは、質問への回答だけでなく、ビジネス全体の評価や戦略特定を積極的に支援し、タグ設定のような複雑なタスクも効率化する。

詳細解説

開発の背景

　現代のマーケターは、膨大なデータの分析、魅力的なコンテンツ作成、そしてキャンペーンの最適化といった多岐にわたる業務を抱えています。消費者が検索、閲覧、ストリーミング、ショッピングなど多様なオンライン行動をとる中で、彼らに効果的にリーチすることの重要性はかつてないほど高まっています。このような背景のもと、Googleはマーケターの負担を軽減し、より高い成果を出すための強力なサポートとして、AIを活用した新しい「エージェント機能」を発表しました。

AIエージェント機能とは？なぜ重要か？

　まず、「エージェント機能（Agentic Capabilities）」について簡単に説明します。これは、AIが単に指示を待つだけでなく、自律的に状況を判断し、目標達成のために能動的に行動する能力を指します。従来のAIが「ツール」としての側面が強かったのに対し、エージェント機能を持つAIは「アシスタント」や「アドバイザー」に近い役割を果たします。

　マーケティングの文脈では、AIエージェントはデータ分析、戦略立案、コンテンツ生成、キャンペーン実行といった一連のプロセスにおいて、マーケターの指示のもと、あるいはマーケターに提案をしながら業務を遂行します。これにより、マーケターは煩雑な手作業から解放され、より戦略的な思考やクリエイティブな業務に集中できるようになります。また、AIの高度な分析能力と学習能力により、人間だけでは見逃してしまうような新たな機会の発見や、より精密なターゲティングが可能になり、キャンペーンのパフォーマンス向上が期待できます。

Google AdsにおけるAIエージェント機能

　Google Adsでは、このAIエージェント機能が具体的にどのように活用されるのでしょうか。記事によると、2年前に導入されたGoogle Adsの会話型エクスペリエンス（AIとの対話を通じてキャンペーン設定などを行える機能）は、既に50万人以上の広告主に利用され、より質の高い検索キャンペーンの作成に貢献しています。この成功を基盤として、さらに広範なエージェント機能が導入されます。

　新しいAIエージェントは、以下のような形でマーケターを支援します。

パーソナライズされた推奨事項: 新規および既存のキャンペーンに対して、キーワードや広告クリエイティブの提案など、個々の状況に合わせた推奨事項を提供します。さらに、マーケターの承認を得て、これらの推奨事項をAIが代わりに実行することも可能です。
最適化された広告グループ作成: 関連性の高い製品やサービスを中心に、テーマが絞られた複数の広告グループの作成を提案します。これには、効果的なアセット（広告文、画像、動画など）の提案も含まれ、キャンペーンの成果向上に貢献します。

　これらの機能は、AIが広範なデータセット、広告主のランディングページ、過去の広告アセット、そしてリアルタイムのキャンペーンパフォーマンスといった情報を学習することで実現されます。これにより、マーケターは推測に頼ることなく、自信を持ってキャンペーンを最適化できるようになります。

Google AnalyticsにおけるAIエージェント機能

　Google Analyticsにおいても、AIエージェントはデータ分析の専門家として機能します。

インサイトとトレンドの能動的な提示: 膨大なデータの中から、マーケターにとって有益なインサイトやトレンドをAIが積極的に見つけ出し、分かりやすいビジュアルと共に提示します。これにより、データ探索が容易になり、迅速かつ的確な意思決定を支援します。
キャンペーンの問題解決支援: キャンペーンのパフォーマンスに問題が生じた際に、その原因究明や解決策の提案をAIが行います。

　これらの機能により、マーケターはデータ分析にかかる時間を大幅に削減し、得られた知見を具体的なアクションに繋げやすくなります。

新たなAIエージェント「Marketing Advisor」

　さらに注目すべきは、Googleが開発中の「Marketing Advisor」です。これは、Chromeブラウザの拡張機能として提供されるAIエージェントで、マーケターが日常的に行う様々なマーケティングタスクを、複数のプラットフォームを横断して支援することを目指しています。

ブラウザ内でのステップバイステップガイダンス: Marketing Advisorをインストールし、GoogleアカウントとGoogle Adsキャンペーンを連携させると、マーケターの個別の目標を理解し、それを達成するための最適な方法を、閲覧中の関連ウェブページ上でサイドパネルに表示し、具体的なステップでガイドします。
能動的な戦略提案と実行支援: 単にテキストや音声で質問に答えるだけでなく、ビジネス全体の評価を行い、戦略を特定し、それを複数の事業ラインにわたって推奨・適用するといった、より積極的な支援を行います。例えば、特定の商品カテゴリーにおける季節的なトレンドといったインサイトも提供します。
複数プラットフォーム連携による問題解決と機会発見: Google Ads、Google Analytics、ヘルプセンター、さらにはウェブサイトやCMS（コンテンツ管理システム）といったGoogle内外のプロパティを横断して機能するため、キャンペーンの問題診断や新たな成長機会の発見に非常に役立ちます。
複雑なタスクの効率化: 例えば、ウェブサイトへのタグ設定のような複雑で手間のかかる作業も、Marketing Advisorが支援します。タグが不足している箇所を特定し、マーケターの許可を得て自動的に設置することまで提案します。

　Marketing Advisorは、2025年後半から順次展開が開始される予定です。これが実現すれば、マーケターはブラウザを開くだけで、常に優秀なAIアシスタントがそばにいて、日々の業務をサポートしてくれるような環境が手に入ることになります。

マーケターにとっての意義

　これらの新しいAI機能は、日本のマーケターにとっても大きな変革をもたらす可能性があります。特に、リソースが限られている中小企業や、少人数で多くの業務をこなさなければならないマーケティング担当者にとっては、作業効率の大幅な向上と専門知識の補完という点で大きなメリットがあります。

　また、AIによる高度なデータ分析と最適化提案は、経験の浅いマーケターでも、より効果的なキャンペーンを展開することを可能にします。言語の壁を越えてグローバルなトレンドや成功事例をAIが学習し、日本の市場に合わせた形で提案してくれるようになれば、国内市場だけでなく、海外展開を目指す企業にとっても強力な武器となるでしょう。

　ただし、AIはあくまでツールであり、最終的な意思決定やクリエイティブな発想、そして顧客との深い共感といった部分は、依然として人間のマーケターが担うべき重要な役割です。AIを効果的に活用し、人間ならではの強みと組み合わせることで、これまでにない成果を生み出すことができるでしょう。

まとめ

　本稿では、Googleが発表したGoogle AdsおよびGoogle Analyticsにおける新しいAIエージェント機能と、Chrome拡張機能としてのMarketing Advisorについて解説しました。これらの技術は、AIがマーケターの業務をより深く、より広範囲に支援することで、キャンペーンのパフォーマンスを最大化し、同時に手作業による負担を大幅に軽減することを目指しています。

　AIエージェントは、データの分析、キーワードやクリエイティブの提案、広告グループの作成、インサイトの発見、問題解決といった多岐にわたる業務をサポートします。特にMarketing Advisorは、複数のプラットフォームを横断して、より能動的かつ包括的なマーケティング支援を提供することが期待されます。

　これらの進化は、マーケターがより戦略的で創造的な業務に集中できる環境を実現し、ビジネスの成長を加速させる可能性を秘めています。