［ニュース解説］NVIDIA CEOが学生に語る「AI活用術」と未来の仕事

2025-05-18

はじめに

　本稿では、世界的な半導体メーカーであるNVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏がAIの活用について語ったCNBCの記事「Nvidia CEO: If I were a student today, here’s how I’d use AI to do my job better—it ‘doesn’t matter’ the profession」を基に、近年のテクノロジー進化の中心にあるAI（人工知能）の活用について、特にこれからの社会を担う学生や若い世代にとって、どのように向き合い、活用していくべきかという重要なテーマについて、解説します。

引用元記事

タイトル： Nvidia CEO: If I were a student today, here’s how I’d use AI to do my job better—it ‘doesn’t matter’ the profession
発行元： CNBC
発行日： 2025年5月17日
URL： https://www.cnbc.com/2025/05/17/jensen-huang-how-id-use-ai-to-do-my-job-better-if-i-were-a-student-today.html

要点

NVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏は、学生に対し、AIを学び、効果的に指示（プロンプト）を出す技術を習得することを強く推奨している。これは将来の専門分野を問わない。
AIへの指示は、文脈を提供し、明確かつ簡潔に整理された指示を出すことが重要である。AIを「賢いが経験の浅い子供」のように捉えると良い。
AIスキルの習得は、将来のキャリアにおいて不可欠なスキルとなり、多くの仕事で求められる能力が変化すると予測されている。
学生は常に「AIを使ってどうすれば自分の仕事をより良くできるか？」と自問すべきである。

詳細解説

ジェンスン・フアン氏の提言：AI学習とプロンプト技術の重要性

　NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏は、放送されたテレビ番組の中で、現代の学生にとって最も重要なことの一つとして、AI（人工知能）を学ぶことを挙げました。

　フアン氏は、もし自分が今の学生なら、まずAIを学ぶことから始めると述べています。特に、ChatGPT、Gemini Pro、Grokといった生成AIツールを使いこなし、それらと効果的に対話する能力、すなわちAIへの指示（プロンプト）技術を習得することの重要性を強調しています。

　「AIとの対話方法を学ぶことは、優れた質問をする能力を持つ人に似ています」とフアン氏は語ります。「AIへのプロンプトも非常に似ています。ただランダムに多くの質問をすれば良いというわけではありません。AIにアシスタントになってもらうためには、どのように指示を出すかという専門知識と芸術性が必要です。」

　例えば、起業家に対して誰かが「あなたのビジネスについて教えてください」と尋ねたとします。ビジネスは非常に複雑であるため、このような漠然とした質問では答えるのが難しいでしょう。しかし、「オンライン小売ビジネスを立ち上げるための最初のステップを説明していただけますか？」と尋ねられれば、より的確で役立つ回答ができます。AIに対しても同様のことが言えるのです。

効果的なプロンプトを作成する秘訣：「賢い子供」への接し方

　では、どうすればAIに対してより良い質問や指示ができるのでしょうか？記事では、Lazarus AIのプロンプトディレクターであるケリー・ダニエル氏のアドバイスを紹介しています。彼女は、AIチャットボットを「賢い子供」のように考えると良いと提案しています。

　「あなたは賢い子供と話しているのです。その子はあなたを喜ばせ、あなたの要求に応えたいと思っています」とダニエル氏は述べています。「しかし、肝心なのは、この子供はあなたのタスクやビジネスについてあなたが知っていること全てを知っているわけではないということです。彼らは文脈や過去の経験が不足しているため限界があり、その文脈を提供するのはあなたの仕事です。」

　ダニエル氏は、AIモデルがより良い応答を生成できるように、プロンプトを明確かつ簡潔に整理することを推奨しています。指示をリストやステップに分解する方が、長文の段落よりも理解しやすいのです。また、望ましいものの例があれば、それも一緒に含めると効果的です。

　ダニエル氏のアドバイスに基づいた良いプロンプトの例として、記事では次のようなものが挙げられています。

　私は会社の年次会議で基調講演を行う必要があります。マイクロソフト初期のビル・ゲイツのような話し方にしてほしい。スピーチには以下の内容を含める必要があります：

第1四半期の素晴らしい業績についてチームを祝福する。
マーケティングおよびメディア戦略における我々の改善点を認識する。
新しい生産性目標を紹介し、従業員がそれを達成するように動機付ける。

　このように、具体的な目的、トーン、そして含めるべき要素を明確に伝えることが、AIから質の高いアウトプットを引き出す鍵となります。

AIスキルの将来性と現状のギャップ

　フアン氏の洞察は、AI技術が将来の仕事に大きな影響を与えるという予測に基づいています。LinkedInの2025年版「仕事の変化に関するレポート（Work Change report）」によると、2030年までにほとんどの仕事で使われるスキルの70%が、AI技術によって変化する可能性があるとされています。これは、AIを使いこなす能力が、これからの社会人にとって極めて重要なスキルセットになることを意味しています。

　しかし、現状では、AIを日常的に使用している若者はまだ少ないようです。ハーバード大学教育大学院、Common Sense Media、Hopelabによる2024年の報告書によると、14歳から22歳のアメリカ人のうち、生成AIを週に1、2回使用しているのはわずか11%に留まっています。

　この現状と将来の必要性との間には大きなギャップが存在します。フアン氏は、AIへのプロンプトを完成させ、より良い質問をするスキルは、今後何年にもわたって重要であり続けるため、学生は専攻分野に関わらず、その開発に時間をかけるべきだと付け加えています。数学、科学、化学、生物学など、どのような分野に進むとしても、AIを活用する能力は普遍的に役立つというのです。