はじめに
近年、AI(人工知能)技術は目覚ましい発展を遂げ、私たちの生活やビジネスに様々な変化をもたらしています。特に画像生成AIは、簡単な指示(プロンプト)を与えるだけで、オリジナルの画像を生成できることから注目を集めています。Googleが提供するAIサービス「Gemini」も、その進化を続けており、今回、アプリ内で直接AIによる画像編集が可能になる新機能が発表されました。
本稿では、このGeminiの新機能について、技術的なポイントも押さえながら解説します。
引用元記事
- タイトル: Upload and edit your images directly in the Gemini app
- 発行元: Google Blog
- 発行日: 2025年4月30日
- URL: https://blog.google/products/gemini/image-editing/
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要点
- GoogleのAIサービス「Gemini」のアプリに、AIによる画像編集機能が追加されました。
- ユーザーがアップロードした画像と、Geminiが生成した画像の両方を編集できます。
- 背景の変更、オブジェクトの置き換え、要素の追加などが簡単な指示で行えます。
- 編集されたAI生成画像には、目に見えない電子透かし「SynthID」が含まれます。
- この機能は段階的に展開され、今後数週間で45以上の言語、多くの国で利用可能になる予定です。

詳細解説
1.Geminiアプリ内で完結する「ネイティブ」なAI画像編集
これまで、AIで生成した画像を編集するには、別の画像編集ソフトを使用する必要がある場合が多くありました。しかし、今回のアップデートにより、Geminiアプリ内で「ネイティブ」に、つまりアプリの標準機能として、AIによる画像編集が可能になります。これは、Googleが以前提供していた「AI Studio」での画像編集機能の経験を活かし、それをGeminiアプリに統合・拡張したものです。
ユーザーは、スマートフォンやコンピュータからアップロードした自身の写真や、Geminiに生成させたAI画像を、シームレスに編集できます。例えば、自分の写真の髪の色を変えてみたり、生成したイラストに新しいキャラクターを追加したりといったことが、テキストによる指示(プロンプト)で直感的に行えるようになります。
2.具体的な編集機能と活用例
記事では、具体的な編集機能として以下の点が挙げられています。
- 背景の変更: 写真の背景を別の風景に変える。
- オブジェクトの置き換え: 画像内の一部を別のものに差し替える。
- 要素の追加: 画像に存在しないものを描き加える。
これにより、例えば「自分の写真を使って、髪の色を赤にした画像を生成して」といった具体的な指示が可能になります。また、テキストと画像を組み合わせた指示も可能です。「ドラゴンが登場するおとぎ話の下書きと、それに合う画像を生成して」のように、より文脈に沿った豊かな応答を得られるようになります。これは、単に画像を生成するだけでなく、テキストコンテンツと連携したクリエイティブな作業を支援する強力なツールとなり得ます。
3.AI生成コンテンツの信頼性担保:SynthIDと可視透かし
AIによって生成・編集された画像が、あたかも本物の写真のように扱われることへの懸念があります。Googleは、この問題に対応するため、Geminiで生成・編集された全ての画像に「SynthID」と呼ばれる目に見えない電子透かしを埋め込んでいます。これは、人間には知覚できませんが、専用のツールで検出することで、その画像がAIによって生成または編集されたものであることを識別可能にする技術です。
さらに、Googleは現在、目に見える形の透かしを全てのAI生成画像に追加することも実験しているとのことです。これにより、AI生成コンテンツであることをより明確に示すことを目指しています。
4.提供範囲と今後の展開
この新しい画像編集機能は、2025年4月30日から段階的に提供が開始されており、今後数週間かけて、45以上の言語に対応し、日本を含む多くの国で利用できるようになる予定です。
5. 日本への影響と考慮すべきこと
このGeminiの新機能は、日本国内のユーザーにとっても多くの可能性を秘めています。
- クリエイティブ分野での活用: デザイナーやイラストレーターでなくても、ブログのアイキャッチ画像、SNS投稿用の画像、プレゼンテーション資料の図などを、より手軽に、かつ独自性のある形で作成できるようになります。
- マーケティング・広告: 商品画像の背景変更や、広告クリエイティブの試作などを迅速に行える可能性があります。
- 教育・エンターテイメント: 物語の挿絵作成や、学習コンテンツのビジュアル化など、多様な分野での応用が考えられます。
- 個人の楽しみ: 写真加工アプリのように、自分の写真を面白く編集したり、理想のイメージを具現化したりする手助けになります。
一方で、AIによる画像生成・編集技術がより身近になることで、フェイク画像の生成や悪用のリスクも高まります。SynthIDのような電子透かし技術は、その対策の一つですが、私たちユーザー自身も、インターネット上で目にする情報、特に画像の真偽を見極めるリテラシーを持つことが、今後ますます重要になります。AIが生成したコンテンツであることを示す「透かし」の有無に注意を払うことも、その一助となるでしょう。
まとめ
本稿では、Google Geminiアプリに追加された新しいAI画像編集機能について解説しました。この機能により、ユーザーはアップロードした画像やAIが生成した画像を、アプリ内で直接、簡単な指示によって編集できるようになります。背景変更、オブジェクト置換、要素追加などが可能で、テキストと画像を組み合わせたより豊かなコンテンツ生成が期待されます。AI生成物の信頼性確保のため、目に見えない電子透かし「SynthID」が導入されており、将来的には可視透かしの追加も検討されています。
この機能は、クリエイティブ作業の効率化や新たな表現の可能性を広げる一方で、AI生成コンテンツに対するリテラシーの重要性も示唆しています。日本でも今後利用可能になるこの新機能を、その利便性と留意点の両方を理解した上で活用していくことが望まれます。
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